日本代表:アジアカップ2019(7)サウジアラビア戦総評

 グループリーグを1位で通過した日本代表。
 決勝トーナメント1回戦ではサウジアラビアと対戦する。

 正直、このカードが1回戦から実現するとは考えていなかった。
 負けたら終わりの決勝トーナメントで求められるのは、内容よりも勝つことだけだ。

マッチレビュー

<決勝トーナメント1回戦>
日本代表 1-0 サウジアラビア代表

<スタジアム/現地情報>
スタジアム:ザイード スポーツ シティ スタジアム
観客数  :6,832人
天候   :晴れ
気温   :19.5℃
湿度   :30%

日本代表のフォーメーション

※選手名敬称略
()内は交代出場した選手

フォーメーション:4-2-3-1
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        武藤嘉紀
       (北川航也)

  原口元気  南野拓実  堂安律
       (伊東純也) (塩谷司)

     遠藤航    柴崎岳

長友佑都 吉田麻也 冨安健洋 酒井宏樹

        権田修一

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【得点者】

前半20分;冨安健洋

【編集長の考察】

 序盤は完全にサウジアラビアのペースで、日本がボールを持つことができない苦しい時間帯が続いていた。

 そんな中、セットプレーのチャンスを確実に得点に繋げて、先制できたことは日本にとって良かった。
 コーナーキックから柴崎選手の正確なセンタリング、エリア内での駆け引きを制し、打点の高いヘディングで代表初ゴールを決めた冨安選手。
 先制点を取れてなかったら、勝敗はどうなっていたかわからない。

 この試合のボランチ(柴崎選手、遠藤選手)は良かった。
 サイドバックが上がって生まれたウラのスペースを、上手くカバーしていた。

 試合の立ち上がりを守備から入って、相手にボールは持たれても主導権を渡さなかったことは大きかった。
 欲を言えば、先制した後、2度は追加点を取れるチャンスはあった。

 1点差のまま試合が進んでいったので、守備陣は集中力を切らさずに良いプレーを見せていたが、攻撃陣がもう1点とって少しでも楽な展開にもっていければ、チームとしてさらに強くなるだろう。

主役が選手ではなく主審

 ただ、この試合のMVPを挙げるなら主審のラフシャン・イルマトフ氏だろう。
 ウズベキスタン出身の方で、AFC最優秀審判に選ばれたこともあり、これまで日本戦も担当したことはある。

[日本戦担当:アジアカップ2011/カタール大会]
・日本対サウジアラビア(グループリーグ第3戦)
・日本対オーストラリア(決勝)

 ちょっとした接触プレーでもファールを取って試合を止めすぎていた印象はあった。
 サウジアラビア側が少し倒れただけで、笛を吹くのはちょっと…という感じを持ったのは、特に日本が守備に追われている時間帯で起こっていたから。

 しかし、日本に対してファールがあった時はしっかりと取ってくれたので安心した。
『中東の笛』という可能性も頭をよぎった。

 主審の判定に疑問を持っていたが、前半39分に武藤選手がイエローカードを出されたシーンは、完全に武藤選手のファールだった。スローで見るとボールではなく完全に相手の足に行っているので…。

 前の試合で1枚もらっている状況、大迫選手が怪我で出場が微妙な状況の中、ワントップのフォワードとして、あの位置でカード対象となるファールはちょっと考えられない。
 ウズベキスタン戦での同点ゴールがかすんでしまうくらい、残念なプレーだった。

 後半はより一層、日本のファール数を取られる回数が増えた。
 日本が攻撃に移る時に、接触があればすぐにファールを取ってサウジアラビアボールに代わる。

 これが繰り返される。
 日本の選手も終盤になるとアピールをするのを止めていたのは、賢い判断だ。

 後半途中から主審が試合の主役になっていた。
 前線で起点もカウンターへの移行も審判により封じられ、守備に追われる時間帯がほとんどだった。

 一部スタッツを記載しているが、ボール保持率の低さに注目が集まると思うが、あれだけファールで日本ボールが奪われると、この数字を見ても不思議ではない。

【スタッツ一部紹介】

日本 サウジアラビア
ボール保有率 23.7% 76.3%
ファール数 27回 13回
シュート数 5本 15本
枠内シュート 2本 1本

 それでも日本が守りきることができたのは、サウジアラビアの決定力不足とゴール前での精度の差だった。

 負けたら終わりの決勝トーナメントで不利な判定にも関わらず、勝ち切ったこと。
 準々決勝進出を決めたこと。これが全てだ。

サウジアラビア代表について

 ポゼッション型のサッカーを確立していて、前半の早い時間帯は完全に日本を圧倒していた。

 またサイドをワイドに使うことで、中央のスペースを空け、スピードのあるパファド選手に縦パスを入れる攻撃パターンが出来ていた。
 足元の技術が高い司令塔タイプの選手が現れたら、チーム力が一段とレベルが上がるだろう。

 筆者にとってサウジアラビアは、W杯に出場するたびに脆さを露呈するチームという印象を持っている。
・2002年の日韓大会ではドイツに8失点完敗。
・2018年のロシア大会では開幕戦でロシアに5失点完敗。

 それでもアジアでは中東の古豪と位置付けられていて、一筋縄ではいかない相手だ。
 W杯アジア予選では対戦する可能性も残しているが、対戦することになればどんなチームになっているのだろうか。

あとがき

 振り返っても、不完全燃焼に近い試合だった。
 特に後半は「フットボール」とはいえない。

 アジアのレフリングのレベルがこの程度なら、2022年カタールW杯も不安でしかない。

 日本が勝ったから、サウジアラビア戦のことをここまで振り返ることができただけ。

 一旦リセットして、準々決勝で対戦するベトナム戦のことを考えようと思う。

 準々決勝は、日本時間1月24日(木)22時キックオフで行われる。