日本代表:アジアカップ2019(8)ベトナム戦総評

 準々決勝はベトナムと対戦。
 日本から見れば格下の相手になるが、サッカーには絶対がないので何が起こるかわからない。

 ヨルダンを破った勢いには注意が必要だが、なぜ試合前から「日本が負けるかもしれない」というネガティブキャンペーンに付き合わなければならないのか?

・前回大会で敗退した鬼門の準々決勝。
・日本は中2日、ベトナムは中3日。日程的には日本が厳しい。

 アジアのベスト8でW杯に出場したことない国に負けるようなことがあれば、W杯でベスト8に進出するのは夢のまた夢だ。

 我々の目指すところはどこか。もう1度問いただしたい。

マッチレビュー

<決勝トーナメント/準々決勝>
日本代表 1-0 ベトナム代表

<スタジアム/現地情報>
スタジアム:アルマクトゥームスタジアム
観客数  :8,954人
天候   :晴れ
気温   :23℃
湿度   :43%

日本代表のフォーメーション

※選手名敬称略
()内は交代出場した選手

フォーメーション:4-2-3-1
===================

        北川航也
       (大迫勇也)

  原口元気  南野拓実  堂安律
  (乾貴士)  (塩谷司)

     遠藤航    柴崎岳

長友佑都 吉田麻也 冨安健洋 酒井宏樹

        権田修一

===================

【得点者】

後半12分;堂安律(PK)

【編集長の考察】

 前半、特に攻撃がひどかった印象。
 日本の攻撃には工夫がないのか?と観ていてイライラした。

 キラーパスをことごとく狙われてボールを奪われるパターンを繰り返す。
 相手が守備を固めてきた時に、手詰まりになるのは初戦のトルクメニスタン戦と何も変わっていない。

 前半は、初戦のトルクメニスタン戦と同じようなプレーを見させられている感じしかなかった。
 横パスでサイドに展開するも打開できるところがなく奪われてカウンター。

 時間が経過するにつれ、ドリブルから1枚はがして局面を打開する場面は増えてきたが、ベトナムの守備のよせが速く、捕まってしまうことが多かった。

 後半に入ってから、攻撃にリズムが出てきてパスがつながるようになった。
 そこからフィニッシュまで持ち込む展開も増え、日本の時間帯が続く。

 PKで先制したあと、確実に追加点を奪える時間帯はあった。
 しかし、そこで試合を決めきれないところが今のチームの弱さだろう。

 また守備では、イージーなミスで自分たちの首を絞めてしまった場面もあった。
 失点にはつながっていないので、大きく報じられることもないが、準決勝で致命傷につながる失点になることだけは避けたい。
 特にゴールキーパーへのバックパスは狙われるだろうな。

【スタッツ一部紹介】

日本 ベトナム
ボール保有率 69% 31%
ファール数 11回 6回
シュート本数 11本 12本
枠内シュート 6本 4本

 サウジアラビア戦と違い、ボールを持てる時間帯は多かった。
 いや、ベトナムからボールを持たされていた。といった方が良いだろう。

 ベトナムが守備のブロックをつくってカウンター主体の戦術だったので、最初から日本がボールを持つ時間帯が多いことは計算済みのはずだ。

 攻撃に関しては、試合を観ながらでも薄々気づいていたがベトナムの方が良かったのはスタッツからでもわかる。

 1対0という均衡したスコアの中で発生した大きな差は、足元の技術といったプレー精度、チームの組織力と経験の差にあったと見ている。

 日本が強者としてのサッカーがしっかり出来ていれば、もう少し楽な展開になっていたはずなのだが、大会を通じて筆者が持つ違和感の1つとして、前半は相手に合わせてサッカーをしているのではないか?ということ。

 例えるなら『横綱相撲のようなサッカー』

 正面から相手を受け止めて、圧倒的な力の差を見せつけて勝利する。

 グループリーグから準々決勝まで全て1点差で勝ち上がってきている日本代表。
 圧倒的な力の差を見せつけているとは言い切れないが、横綱相撲に近いものに感じている。

主役は準々決勝から導入されたVAR

 VARとはビデオアシスタントレフリーのこと。

 主審を助ける副審のような位置づけだが、VARの使用を決めるかどうかは主審の裁量による。

VARが発動できるケースは4つのみ
・得点の有無
・PKの有無
・レッドカード相当の行為なのか確認
・間違った選手への処分ではなかったのか確認

 今大会は準々決勝からVARが導入されるレギュレーションになっているが、早速VARが大活躍した。

 前半24分、柴崎選手のコーナーキックから吉田選手が合わせて先制ゴールを決めたかのように思えたが、VARにてゴール取り消しの判定。スローで見ると吉田選手の手に当たってゴールに吸い込まれたようだ。

 後半10分、ペナルティエリア内で堂安選手が倒されるもノーホイッスル。
 しかし、VARによってPKが認められる。このPKを堂安選手が決めて日本が先制した。

 これはあくまで仮説だが、VARがなければ吉田選手のゴールが認められて堂安選手が倒されたプレーは流されていただろう。
 どっちにしろ日本が1対0で勝利することには変わりなかったように思う。

 結果論として、この試合の主役はVARになった。

ベトナムについて

 常に全力プレーという印象。
 スタジアムに訪れた多くのサポーターの後押しもあっただろう。

 3-6-1と守備重視のフォーメーションだったので、中盤でボールを奪ってからの攻守の切り替えが重要になるが、それを走力でカバーしていた。

 また守備の時間帯でもボールに対して体全体を投げ出して、100%の力でブロックに飛ぶ。

 本来ならスタミナを奪われ、後半になると運動量が落ちるものだが、それでも90分最後まで走ることを止めなかった。

 弱者の戦略といえばそれまでだが、「日本を相手にするなら120%のプレーをしないと勝てない」というベトナムの意思表示のように感じた。

 日本も見習うべきところもあった。
 それはカウンターのスピード。

 パスカットからの素早いカウンターはもっと精度が上がればベトナムの武器となり、アジアでも脅威になるだろう。

あとがき

 内容はともかく、ベトナムに勝利し準決勝進出を決めた日本。
 準決勝の対戦相手はイランに決まった。

 直接対決は2015年10月13日にテヘランで行われた国際親善試合以来となる。
 この時は1対1と引き分けに終わっている。

 最近のイラン代表の印象は、ロシアW杯でポルトガル、スペインと同組になるもヨーロッパの強豪国に対して、あと一歩というところまで追いつめたサッカーをする強敵。日本にとって間違いなく今大会の大一番となる。

 準決勝に向けて日本のプラスの材料は、大迫選手がプレー可能になったこと。
 準々決勝で出場停止だった武藤選手が復帰すること。
 イエローカードをもらっていた南野選手、堂安選手、塩谷選手、酒井選手、権田選手の累積がリセットされること。

 青山選手は怪我のため離脱となったが、現状でのベストメンバーで臨める準決勝で日本の真価を問いたい。

 準決勝は日本時間1月28日(月)23時キックオフで行われる。