ハリルホジッチ氏、訴訟を取り下げる

 元日本代表監督であるハリルホジッチ氏が日本サッカー協会に対して訴訟を起こしていたが、4月10日に訴訟を取り下げたと報道があった。

「日本サッカー協会の田嶋幸三会長と日本サッカー協会に慰謝料1円と謝罪広告を求める」
 といった訴訟内容だったことを覚えている人はどれだけいるだろうか?

 ハリルホジッチ氏が日本代表監督を電撃解任されたのは、2018年4月9日。
 あれから1年が経過し、ハリルホジッチ氏が訴訟を取り上げる形での幕引きとなった。

終わったから良かったではない

「慰謝料1円」というのは、裁判を起こした理由がお金ではないこと。
 日本サッカー協会と田嶋会長に対して謝罪を要求するために起こした裁判だということは、法律にそこまで詳しくない筆者でもわかる。

 ハリルホジッチ氏が訴訟を取り下げる前、双方とも和解せず徹底的に争う。
 という情報もあっただけに、このような結末は予想外だった。

 ロシアW杯で決勝トーナメント進出。アジアカップ2019で準優勝。
 と、日本代表の活動は続いていく中で、西野朗氏から森保一氏に監督は変わったが、その裏で、ハリルホジッチ元日本代表監督は弁護士を立て、日本サッカー協会と同協会会長を相手に裁判で戦っていた。

 あまり報道されていなかったのは、この裁判が2回目以降は非公開で行われていたからだろう。
 機会があれば傍聴したかった…。

 今回の当事者でもある田嶋会長が、訴訟取り下げを受けてコメントを発表していたのを読んだが、『きれいごと』での幕引きに怒りすら覚えた。

 ロシアW杯開幕を2か月後に控えた時期に選手、ファンを巻き込んで起こった大騒動の幕引きがこんなきれいごとのコメントだけで良いのだろうか。

 日本人にとって大事にされている「義理と人情」はどこにいったのだろうか。
「終わり良ければ総て良し」は、本件には該当しない。

フランス指揮官とは合わないのか?

 ハリルホジッチ氏が電撃解任された時、なぜか私の頭に出てきたのは元日本代表監督のトルシエ氏だった。

 トルシエ氏は1998年のフランスW杯後に日本代表監督に就任し、2000年のシドニー五輪ベスト8、2002年の日韓W杯では初の決勝トーナメント進出を決めるなど実績を残した監督だ。

 実績だけ見れば、この時代の日本代表の成績としては驚異的なものだ。
 だが、その経過を記憶をたどりながら思い出すと、日本メディアを敵に回したり、説明不足な不可解な采配があったりなど、どこかハリルホジッチ氏の解任前と似ている部分があった。

 2002年日韓W杯ベスト16の実績があれば、延長契約の打診はあっても良いものだが、トルシエ氏はW杯後に退任している。

 ここからは推測であるが、退任ではなく事実上の解任だったのではないだろうか。

 トルシエ氏の次の監督がジーコ氏だったことを考えると、トルシエ氏で積み上げてきたものを1度リセットしたい。という意向もあったジーコ氏の起用だったのではないだろうか。と考える。

 その根拠は、トルシエ氏とジーコ氏のサッカー感が全く異なるということ。
 ハリルホジッチ氏の後を継いだ西野氏もサッカー感が異なる部分では似ている。歴史は繰り返すということだろうか。

 ハリルホジッチ氏、トルシエ氏といったフランスの指揮官と日本人は相性が悪い傾向にあることから、「フランスに由来がある指揮官と日本人は合わない」という仮説を立ててみた。

 サッカーとは全く関係がないことだが、今現在、ニュースをにぎわしている日産自動車会長・三菱自動車工業会長・ルノー取締役会長兼CEOのカルロス・ゴーン氏。

 2018年11月に金融商品取引法違反の容疑で逮捕されたが、2019年4月現在容疑を認めていない。
 1度目の逮捕以降、様々な憶測や意見が飛び交ったが、まだまだ終息には時間がかかりそうだ。

 ゴーン氏側の主張と日産側の主張が食い違っている点など、分野は違うが、ハリルホジッチ氏と日本サッカー協会が揉めた構図と似て非なる部分は少なからずあったのではないだろうか。

 日本人とフランス人が揉めると同じ構図になるということは、フランスに由来がある指揮官と日本人は合わない…と大枠では考えざるを得ない。という検証に至った。

あとがき

 日本サッカー協会では現体制が変わらない限り、今後フランス人監督を招聘することはないだろう。

 また外国人監督とは揉めた事実は、ハリル氏の件で世界中に広まってしまい、今後代表に外国人監督を招聘することが一層難しくなったことも意味している。

 ハリルホジッチ氏は現在、フランス1部リーグのナントの監督を務めており、W杯前に起こった自身の悲劇から再スタートを切っている。

 先日、日本代表の昌子源選手が所属するトゥールーズとの対戦があり、試合後昌子選手がインスタグラムのストーリーズに2ショット写真を掲載していた。

 日本代表の守備陣からの信頼は未だに厚い。

 真実は選手の行動のカタチにある。