2022カタールW杯2次予選の初戦を迎えた日本代表。アウェイでのミャンマー戦を振り返る。
マッチレビュー
日本代表 2-0 ミャンマー代表
<スタジアム/現地情報>
スタジアム:トゥワンナスタジアム
観客数 :25,500人
天候 :雨
気温 :30.0℃
湿度 :95%
日本代表のフォーメーション
()内は交代出場した選手
フォーメーション:4-2-3-1
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大迫勇也
中島翔哉 南野拓実 堂安律
(久保建英) (鈴木武蔵) (伊東純也)
柴崎岳 橋本拳人
長友佑都 吉田麻也 冨安健洋 酒井宏樹
権田修一
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【得点者】
前半16分;中島翔哉
前半26分;南野拓実
【日本代表スタッツ】
ボール支配率 :71%
シュート数 :30本
枠内シュート :12本
パス成功率 :85%(664本)
オフサイド : 2回
フリーキック :14本
コーナーキック:14本
【編集長の考察】
初戦ということで、どうしても見ている側も構えてしまうのだが、開始5分くらいで日本が圧倒しないといけない相手だと理解した。
それだけミャンマーとの自力の差は、最初の数少ないプレーの中でも明らかだった。
引いて守っている割にはミャンマーの守備は組織化されておらず、寄せないといけないところで寄せ切れていないなど脅威を感じるような守備ではなかった。
日本の両サイドバックが深い位置まで攻め込んでいるのに中央を固めているだけでは、今の日本代表の攻撃を止めることはできない。
中島選手のミドルシュートで先制したが、引いて中央を固めた相手には常套の手段であり、特段に日本が優れているから生まれたゴールではない。
注目したいのは、前半16分という早い時間帯で日本が先制できたこと。
これまで得点力不足が嘆かれてきた日本代表にとって、中島翔哉選手の存在はより大きいものになった。
南野選手の追加点も時間帯もよく、ホームのミャンマーの士気を落とすには十分なゴールだった。
ただ、スコアレスでズルズル時間だけが経過して前半を折り返し、後半30分まで続いていたら、どうなっていたかわからない。
アジア予選で格下相手だからと手を抜けばやられる。
サッカーはジャイアントキリングが起こりやすいスポーツであり、特にアウェイでの戦いは今後も用心したい。
日本が2点リードしたことで、ミャンマーの選手がアウターに近い悪質なファールが増えてきた。
東南アジアのチームに多いのが、未だに足元への深いタックルが多い。スライディングでも確実に足を狩りに来ているように見える。
大迫選手が相手選手の悪質タックルに激高したのは、良い牽制になった。
その後、そこまで日本選手に悪質なファールで止めに来るシーンは少なかった。
こういうところでも試合巧者としての立ち回りが出来ているのは、日本代表チームとして、または選手個人の成長もあるだろう。
この試合、前半はアウェイ、天候、ピッチコンディションを考慮すると、ほぼ完璧に近い内容だったと思う。
攻撃陣の課題としては、後半にトドメの3点目を取れなかったこと。
後半も攻め込む時間帯が多かったし、決定的なチャンスは何度もあった。
相手キーパーのファインセーブを褒めればそれまでだが、前半のような工夫された攻撃ではなく、単調な攻撃になってしまったことがかえって守りやすかったのではないか?と推測してしまう。
守備陣に関しては文句の付け所がない。
それ以上に、このレベルでの試合は両サイドバックの長友選手、酒井選手がほぼ無双状態のため、日本の攻撃に厚みは出るし、サイドから攻撃を仕掛けられても簡単に跳ね返せる。
吉田選手はセットプレーではターゲットになり、守備ではチームを統率とアジアカップを通じてキャプテンとして欠かせない存在になりつつある。
特筆したいのは冨安選手だ。カバーリングなどの危機管理能力が秀逸だった。
ミャンマーのカウンターでも、冨安選手がいれば安心してみていられた。
怪我や累積警告がなければ、後ろの4枚は替える必要はないだろう。日本のディフェンスラインは間違いなくアジアNo.1だ。
◆偶然の出来事?
2試合続けて同じ現象が起こった。
前半に2点を奪ってリードした段階で前半を折り返すと、後半は目に見えてプレー精度が落ちていること。もっといえば2点をリードした段階からプレー精度は落ちている。
後半から相手が守備を修正してきたのもあるが、技術的なことより選手のメンタル部分が大きいと見ている。
指示通りタスクを完了させたあと、残り時間でやることは攻撃重視?守備重視?という迷いみたいなのもあるかもしれない。
自分も点を取りたいからさらに攻撃に出たい選手と、2点リードしているからある程度守備に重きを置きながらプレーしたい選手が出てくることで、どっちつかずの時間帯が多いのもある。
森保体制結成当時より「イケイケどんどん」の感じは、プレー内容では変わってきているが、根っこの部分ではまだ変わっていないのかもしれない。
その悪い部分がとどめを刺す(3点目を奪う)ことができないのではないだろうか。
たらればだが、今後2対0とリードしている状況で1点を返されたら、バタバタして一気に同点に追いつかれてしまうのではないか。という一抹の不安はつきまとっている。
◆試合開始前に得られた一般メディアからの事前情報
専門のスポーツメディアは、選手個人へのインタビューを通して現地からの1次情報を伝えてくれるので、情報を得る側としては助かることの方が多かった。
問題は一般メディアだ。
私が特に気になったのは下記に掲載した3点。
・ピッチの悪さやスコールなど環境面で過度な報道
・初戦は必ず苦戦しているというマイナスデータを掲示
・久保建英選手の記録に固執
アウェイならどこも厳しい環境であるのは当たり前で、それがホーム&アウェイで行われる醍醐味の1つだ。だからこそ厳しい試合になるし、簡単に勝ち上がることは難しい。
これまで初戦は苦戦してきたことは認めるが、必要以上に煽る必要はない。過去の日本代表と今の日本代表を単純に比較することは難しいからだ。
一般メディアのスポーツ報道に嫌気に指している筆者だが、パラグアイ戦から2試合を通じて、タレント扱いのように久保建英選手を持ち上げるのはどうかと思う。
日本代表歴代最年少出場記録は報道の自己満足でしかない。そのキーワードを言いたいだけだろう。
極めつけは、試合後の監督インタビューの際、森保監督に途中出場となった久保選手に対して、投入前にどういう指示を出したか?という質問をしていたが、全くのナンセンスだ。
今回の交代枠の使い方は、正直納得している部分が多い。
試合の流れを見ながら、どのタイプの選手を使うか的確な判断をしていたと思う。
時間の関係もあるかもしれないが、久保選手のことを聞きたいなら、伊東選手、鈴木選手の投入の意味も聞いてくれないと、ベンチワークの意味を失ってしまう。
久保選手を取り上げたいなら、チームを勝利に導くゴールを決めた時に大々的に報道してほしい。
◆2戦目以降の課題
W杯予選はAマッチデーに行われるため、年内は10月、11月に予定されている。
各選手のコンディションと試合勘の意地が大事になる。
海外組が多いことは、クラブチームに変えれば激しいポジション争いがまっているということ。
試合に出場したメンバーは、クラブである程度出場機会が与えられている選手だった。
今回招集されたメンバーのほとんどは、調子が良さそうだったので、自然と良いプレーに繋がったのだと思う。
だが、ここでメンバー固定をしてしまうのは危険だ。
ディフェンスラインは不測の事態以外で選手構成を変更する必要はないが、問題は2列目の選手構成だ。
9月の代表戦ではまずまずの結果を残したが、まだまだ上のレベルでの注文を付けたいと思う。
それだけ日本の2列目の選手には逸材が揃っている。
W杯優勝経験国の2列目、ビッグクラブに所属している2列目の選手は、まだまだこんなものじゃない。