日本代表:Road to カタール(61)国際親善試合カナダ代表戦マッチレポート

カタールW杯初戦のドイツ戦を前に最後のテストマッチが、アラブ首長国連邦のドバイにあるアルマクトゥームスタジアムにて行われた。
Jリーグはシーズン終了後、海外組はシーズン中ということで選手毎にコンディションが異なり、怪我明けの選手が多く連携を高めるというより、コンディション調整に充てる位置付けになった親善試合となった。

内容は良くなかったし、W杯本番前に課題は山積みになったが、この試合の収穫を1つ挙げるなら、現体制の日本代表は先制すれば勝率が良いというジンクスの幕引きが出来たこと。W杯では何が起こるかわからないことを暗示しているようだった。

マッチレポート

前半8分、相馬選手のゴールで日本が幸先良く先制するも、前半21分カナダにコーナーキックから同点ゴールを決められ追いつかれてしまう。

日本の前線からのプレスは何度か効果的だったが、継続的に良かったわけではなかった。テストマッチだったから必要以上に激しくいかなかったのはわかるが、プレスがハマらなかった時はオープンな展開になって自陣でのファールが増えてしまい、相手にセットプレーを与えてしまいピンチの場面が多かった。前半を1対1で折り返したものの、カナダのセットプレーに対して後手後手に回るなど不安定さを覗かせた。

後半開始から3人を交代させたがプラン通りだろう。怪我明けの選手がどれだけプレー出来るのかを試合で確認するのは重要だが、途中から入った選手が全く機能していなかったのは、ベンチから具体的な指示が出ていなかったのではないかと疑ってしまう。結果的に後半はほとんど見所がない内容だった。

1対1で後半40分を迎えた最後の勝負所で、カナダはペナルティエリア内でファールをもらいにいくプレーを見せていて、テストマッチとはいえ勝利への執念を感じた。そういう細いプレーが功を奏してカナダがPKを獲得し見事成功させて逆転に成功した。

日本にも同じ状況はあった。伊藤選手からペナルティエリア内でポジションを取っていた上田選手に長い縦パスが入るが、この時にファールを貰いに行くプレーが選択されなかったのは残念だった。ボールが入ったものの相手ディフェンダーを背負ってキープしてしまったので、これで倒れてもファールは取ってもらえない。せめてゴールに向かってシュートへ行く過程を見せていたら展開は変わっていたかもしれない。

W杯前最後の試合で内容はともかく、ピッチでプレーしている選手達から勝利への執念が感じられなかったことに危機感を抱いている。時代遅れの考えかもしれないが最後は気持ちの部分を見せれるかどうかだ。

【フォーメーション:4-2-3-1】
()内は交代時間と交代出場した選手

        
        浅野拓磨
      (45,上田綺世)

 久保建英   南野拓実   相馬勇紀
(45,堂安律)  (85,吉田麻也)

     田中碧   柴崎岳
   (67,鎌田大地)

伊藤洋輝           酒井宏樹
              (45,山根視来)

     谷口彰悟  板倉滉
          (67,長友佑都)

        権田修一

迷采配

日本代表の首脳陣が自分達の作戦に酔っていると感じた。ゲームプラン、交代選手の使い方、3バックへの変更と、既に試合前から想定していたことをそのまま試合で披露しただけのように見えたのは気のせいだろうか。

気になったのは後半から攻撃の形が全く作れていないことに対して、ベンチから指示を出しているシーンが映像では確認できなかったこと。給水タイムがあったからその時に伝えていたのかもしれないが、プレーに反映されていないのでは指示が出ていなかったと思われても仕方ない。

強化試合だからプラン通りにやってみて、改善点を見つけるのも1つだが、ゲーム展開からどうするかのテストは必要だったのではないのだろうか。

所属クラブのおかげ

鎌田選手のボランチ、久保選手の左サイド。これは今シーズン、両選手が所属クラブで起用されるようになったポジションだ。
これまで鎌田選手はトップ下または2シャドーの1角、久保選手はトップ下か右サイドが主戦だったが、新しいポジションでプレーすることでプレーの幅が広がったように感じる。鎌田選手はドイツ・ブンデスリーガ、久保選手はスペイン ラ・リーガの欧州4大リーグでも コンスタントに試合に出場出来るようになったことでパフォーマンスが格段に上がり、それが日本代表に還元されつつある。

クラブと代表では求められるものが違うといえばそれまでだが、代表チームでは用意したシステムにただ選手を当てはめただけに見えてしまうのは気のせいだろうか。総力戦といえば聞こえは良いが、首脳陣の無策が露呈しただけなのかもしれない。

疑問点

選手のレベルが上っているので、日本代表の首脳陣が要求したことを何でも体現してしまうのではないだろうか。
あくまで仮説の段階だが、海外クラブの戦術の方が日本代表の戦術より優れていて、それだけで良いのかと選手が悩みながらプレーしているのではないかと疑ってしまう。

各選手への指示は出ているけど、チーム全体としての具体的なビジョンが選手間で共有出来ていないからチームとして本来出せる最大値の力の半分しか出てないような気がしている。選手同士でお互いの良さがわかっている組み合わせだと連動して崩す場面もあるが、これまでの積み上げを強調してきたわりに急増突貫チームにしか見えないのは気のせいではなさそうだ。

マッチレビュー

日本代表 1-2 カナダ代表

【日本代表:得点者】

前半 8分;相馬勇紀

【スタッツ】

日本代表 カナダ代表
ボール支配率 44% 56%
シュート数 8本 15本
枠内シュート 2本 3本
パス成功率 455(82%) 539(85.7%)
オフサイド 3回 1回
フリーキック 9本 15本
コーナーキック 2本 8本

【スタジアム/現地情報】

スタジアム:アルマクトゥームスタジアム
観客数  :2,971人
天候   :晴れ
気温   :28.5℃
湿度   :58%

招集メンバー

ポジション 背番号 選手名
GK 1 川島永嗣
12 権田修一
23 シュミット・ダニエル
DF 5 長友佑都
22 吉田麻也
19 酒井宏樹
3 谷口彰悟
2 山根視来
4 板倉滉
16 冨安健洋
26 伊藤洋輝
MF 7 柴崎岳
6 遠藤航
14 伊東純也
10 南野拓実
13 守田英正
15 鎌田大地
24 相馬勇紀
9 三笘薫
8 堂安律
17 田中碧
11 久保建英
FW 18 浅野拓磨
25 前田大然
21 上田綺世
20 町田修斗

カナダ戦:ベンチ外

MF.遠藤航
MF.守田英正
MF.三笘薫

あとがき

怪我や体調不良が原因でコンディションが良くないから負けたみたいな印象操作が感じられる実況に少し嫌気が差した。
蒸し暑い中での試合になったが、身体が動きやすい気候でプレーしたことにより、怪我明けの選手にとって効果的なゲーム形式のトレーニングが出来たと捉える方が良いと思う。

テストマッチなので勝敗は関係ないといっても、1対1のまま引き分けに終わるのと勝ち越されて負けて終わるのでは選手に少なからず悪いイメージが残るはずなのでそれの方が心配だ。