代表戦に出場した海外組の所属クラブでの動向[2019年9月]

 パラグアイとの親善試合、ミャンマーとのW杯2次予選で9月の代表活動を終えた代表選手達。

 代表活動を終えて所属クラブに帰った海外組。
 クラブでの活躍を追っている中、ある異変に気付いた。
 それは日本代表の主力選手が相次いで負傷離脱しているという耳を疑いたくなることだった。

「極東」
 ヨーロッパから見た日本が位置する場所である。

 ヨーロッパでプレーする日本人選手が増え「クラブで主力に定着すれば代表にも呼ばれる」という流れの中で、シーズン中の長時間移動は所属クラブにとって選手のコンディション面で大きな悩みとなっている。

代表戦後に増える負傷者

 現地時間9月10日にミャンマーと対戦し、2対0で勝利した日本代表。翌日には所属クラブに戻るため早々に帰路についた。週末に開催されるリーグ戦のため少しでも早くチームに合流するためだ。

 その週末に行われたリーグ戦を海外組の中で欠場したのは、マルセイユの酒井宏樹選手だけだった。
 左ハムストリング負傷と発表されていたが、現地時間9月15日のモナコ戦、同21日のモンペリエ戦と2試合の欠場を余儀なくされた。開幕から4試合連続で先発フル出場していた酒井選手の欠場は、負傷の大きさを物語っていた。

 ミッドウィーク開催となった同24日のディジョン戦に2試合ぶりに先発で復帰したが、後半33分に途中交代となっている。サイドバックの選手が負傷以外での交代は珍しいので怪我を疑ってしまったが、次戦(現地時間9月29日)の出場には問題ないと報道されている。

 ブレーメンの大迫勇也選手は練習中にハムストリングを痛めて全治6週間と診断されている。
 これには予兆があって、現地時間9月14日に行われたウニオン・ベルリン戦で、痙攣のような症状があり後半24分に交代となっていた。

 試合後、足を攣っただけと軽傷であることが伝えられ安心していた矢先、21日のライプツィヒ戦に向けたチームトレーニング中に負傷離脱となった。

 1番驚いたのはガラタサライの長友佑都選手。
 現地時間9月22日に行われたマラティヤスポル戦で前半のみで交代となっていた。

 負傷を懸念したが、どうやら疲労が原因だったようだ。ある記事には自ら申し出て前半のみで交代になったと伝えられている。

 ただ、長友選手の場合、代表活動を終えて現地時間9月14日のカスムパシャ戦に先発フル出場。
 そこから中3日で行われたCL(UEFAチャンピンズリーグ)グループリーグ初戦、アウェイでベルギーのクラブ・ブルージュと対戦し、この日も先発フル出場している。

 約3週間も週2のペースで負けられない戦いの中に身を置けば、いくら強靭なフィジカルを持ち、栄養管理を徹底している長友選手といえど体調不良になってもおかしくはない。

 今回の代表戦、アウェイのミャンマー戦で目に見えないダメージが残っていた可能性は高いと見ている。大雨によりピッチコンディションが悪かった影響も否定はできない。

 プレーした選手は絶対に言い訳しないし、仮にインタビュワーが怪我の有無について質問しても「問題ない」と強調するだろう。言える時になれば所属クラブが公式発表してくれるのでそこまで待つしかない。

 見てる側としては勘繰りたくもなるし、発表があるまで何かと憶測が頭の中を駆け巡っているが…。

 また負傷した選手のポジションがセンターフォワードとサイドバックの選手だということも注視したい。
 センターフォワードの大迫選手はポストプレーで相手を背負う場面も多く、フィジカルコンタクトが必要なため削られる可能性は少なからずあるが、フォワードの宿命だからどうしようもできない。

 酒井選手、長友選手の両サイドバックは、先日の代表戦ではかなり高い位置まで上がって攻撃参加していたシーンが印象的だった。豊富な運動量でチームを支えた一方で、疲労は蓄積されていて回復が追いつかなかったと推測している。

年齢を気にするより過密日程を疑え

 代表チームの平均年齢がW杯の時になると、大きく取り上げられるが、むしろ年齢を気にするのは過密日程時のコンディション調整の方だ。

 今回は大迫選手、酒井選手、長友選手に注目したが、共通点はパラグアイ戦、ミャンマー戦に先発出場した選手だったこと。加えてミャンマー戦で3選手はフル出場を果たしている。

 日本代表で中心選手といえど、年齢的なものもあるのかもしれない。

・長友佑都:33歳(生年月日:1986年9月12日)
・酒井宏樹:29歳(生年月日:1990年4月12日)
・大迫勇也:29歳(生年月日:1990年5月18日)

 サッカー選手としては決して若い方ではなく、ベテランの域に達してきている。

 近年のスポーツ医学、トレーニング方法は一昔前より格段に進歩していることで、サッカー選手としての選手寿命は伸びているが、タイトな日程となるとパフォーマンスに影響する体の異変は感じるようになる。

 ただ、代表でもクラブでも元気にプレーしている選手もいる。
 パラグアイ戦、ミャンマー戦で2試合連続でフル出場したボローニャの冨安健洋選手。パラグアイ戦、ミャンマー戦に先発出場したザルツブルクの南野拓実選手だ。

※今回の掲載基準は、代表でもクラブでも定位置を確保している選手を取り上げて検証している。

・南野拓実:24歳(生年月日:1995年1月16日)
・冨安健洋:20歳(生年月日:1998年11月5日)

 若さもあるのだろうか。
 それでも常に先発メンバーに名を連ねることは難しい。

 南野選手は、代表活動を終えチーム合流して迎えた現地時間9月14日のリーグ戦(対ハルトベルク)は途中出場となったが、中2日で行われたCL(UEFAチャンピンズリーグ)グループリーグ初戦、ホームでベルギーのゲンクとの一戦は先発フル出場している。

 ただ、代表合流前の現地時間8月31日のリーグ戦(対WSGヴァッテンス)は欠場、CLグループリーグ初戦から中4日で迎えた現地時間9月22日のリーグ戦(対LASKリンツ)は途中出場と、体調面を配慮された可能性もある。
 選手の起用法から負傷するリスクを避けるマネジメントにも注目していきたい。

 一方、冨安選手は、リーグ戦開幕から全試合スタメンでフル出場を果たしている。
 代表活動を終えチームに合流して迎えた現地時間9月15日のリーグ戦(対ブレシア)も先発フル出場。中6日で迎えた同21日のリーグ戦(対ローマ)、中2日で迎えた同25日のリーグ戦(対ジェノア)もフル出場を継続しており、パフォーマンスも維持している。
 
 現在所属するボローニャの日程は週末のリーグ戦だけとなっているので、まだコンディション調整がしやすかったかもしれない。

 さらに付け加えると、吉田麻也選手、柴崎岳選手も代表では南野選手、冨安選手と同じような出場時間だった。

 吉田選手は、代表帰りで迎えた現地時間9月14日のリーグ戦(対シェフィールド)は先発フル出場し、1対0で勝利。
 中5日で迎えた同20日のリーグ戦(対ボーンマウス)は、ベンチ入りも出番なし。
 中3日で迎えた同24日のリーグカップ3回戦(対ポーツマス)は、先発フル出場し4対0で勝利し、4回戦進出に貢献している。

 一方柴崎選手は、代表帰りで迎えた現地時間9月16日のリーグ戦(対ヒホン)は先発出場するも、1点ビハインドの状況も影響したか後半26分に交代。
 中1日で行われた同18日のリーグ戦(対ヌマンシア)も先発出場するも後半14分に交代。前半にイエローカードをもらっていた影響もあるが、1点リードしている状況での交代だったので試合前のプラン通りだったのかもしれない。
 中2日で行われた同21日のリーグ戦(対カディス)はフル出場を果たしているが、試合は引き分けに終わっている。

・吉田麻也:31歳(生年月日:1988年8月24日)
・柴崎岳 :27歳(生年月日:1992年5月28日)

「若さ」という言葉だけで片付けれる問題ではなさそうだ。所属クラブでの試合日程も大きく影響している。
 国内のリーグ戦、カップ戦であれば休養を挟みながらであれば、代表活動を挟んでも、所属クラブの試合に出場できるコンディションは維持できる…ということか。

 1つ提案するなら、クラブに代表にと過密日程が続く場合、これまで常連としてチームを支えてきた選手をここぞという時に招集して、あとは若手を中心に代表チーム全体の底上げを図る良い時期なのかもしれない。

 CL(UEFAチャンピンズリーグ)、EL(UEFAヨーロッパリーグ)に出場するクラブに所属している選手に代表組は多いので、過密日程でコンディションを落としている場合は無理に呼ぶ必要はないが、代表チームのパフォーマンスに大きく影響が出てしまう可能性はある。

 2022年カタールW杯出場をかけた二次予選真っ只中、FIFAランク上では格下相手との対戦しかないが、1つの敗戦や取りこぼしで流れが変わることがあるので、メンバーを大きく入れ替えるのは現実的には大きな抵抗がある。

過密日程の影響は否定できない

 国内のリーグ戦、カップ戦であれば、まだ問題ないのだろうけど、代表戦での長距離移動またはUEFA主催の大会を挟むと選手への体への負担が大きいと見ている。

 日本人選手だけではなく、ヨーロッパや南米の選手にも過密日程の影響は出ている。
 特にビッグクラブにあることだが、週末はリーグ戦、ミッドウィークにUEFA主催大会や国内のカップ戦、さらに未消化または延期となっているリーグ戦の試合が組まれることもある。

 どうしても新シーズン開幕から前半戦までは、週2のペースで試合をこなす必要も出てくる中で、2018年から「UEFAネーションズリーグ」というヨーロッパのナショナルチーム(A代表)による新しい国際大会が始まった。

 各グループの1位になれば、欧州選手権予選で出場権を得られなかった場合に、プレーオフ出場権を得られる権利も得られるというメリットもある。

 ヨーロッパのナショナルチームはW杯が終わるとネーションズリーグが始まり、W杯から2年後に開催される欧州選手権(ユーロ)に向けて予選を戦うことになる。

 ユーロが終わると2年後に開催されるW杯に向けてW杯予選を戦うことになるので、クラブと代表で常に真剣勝負の試合が続く欧州勢も過密日程は懸念されている。

 特にビッグクラブに所属している選手が、代表に選ばれる比率は高いので選手への負担が年々増している。
 イングランド・プレミアリーグには、現在ウィンターブレイクが採用されていないので、選手を守るために今後導入される可能性もあると言われている。

 各国の代表選手を抱えているクラブの監督が1番頭を悩ませる問題であり、クラブの中心選手が代表の試合に行って怪我をして帰って来たとなるとプランが崩れてしまう。

 日本サッカー協会と大迫選手の所属するブレーメンが揉めたように、各国協会とクラブ側の折り合いをつけないと、今後の国際Aマッチデーの在り方も変わっていくのかもしれない。

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FOOTBALL NOTE編集長。1983年6月13日生まれ。岡山県出身。フットボールをテーマにした読者の知的好奇心を刺激するコンテンツ作りに着手し「FOOTBALL NOTE」を立ち上げる。コンセプトは「世界のフットボール情報がここにある」※お問い合わせはコチラからどうぞ