ドルトムントの失速は前監督のペーター・ボス氏だけが原因とは考えにくい

ドイツ・ブンデスリーガ、ドルトムントの2017-18シーズンの前半戦を振り返る。開幕当初は絶好調。しかし、9月30日に行われた第7節のアウグスブルク戦に勝利したあと泥沼にはまっていく。DFBポカール2回戦で勝利したものの、第8節から第15節までのリーグ戦と、CLグループリーグ第3節から最終節までの成績が「1勝5分7敗」と失速。最後は盛り返しリーグ3位で折り返したが、約2か月間の低迷はボス前監督に全てあるようには思えなかった。

怪我人続出も厳しいが、デンベレ選手のバルセロナ移籍が決まった時期がさらに追い打ちをかける。

 2017-18シーズン開幕前、アジアツアーで日本に来日し浦和レッズとの親善試合が行われた。私はこの試合を埼玉スタジアムで現地観戦したが、シグナルイドゥナパルクで観戦した試合とは雲泥の差があった。シーズン開幕前の準備期間だったとはいえ、そこを差し引いてもチームとしての不安定さを露出していた。試合は逆転勝ちを収めたが、モル選手の個人技がなければどうなっていたかわからない試合だった。

 浦和戦で活躍したモル選手も開幕前に放出され、さらにデンベレ選手が突然のバルセロナ移籍。その後ヤルモレンコ選手を補強したが、新チームが始動しブンデスリーガ開幕が迫ったころの合流となったところにプラス要素は感じられなかった。就任したばかりのボス監督にとっては前途多難なスタートとなったのは間違いない。

 2017-18シーズン開幕直後は私の予想に反してチームの快進撃は続いた。攻撃陣が爆発し大量得点で勝利する試合も多く、チームとしても好調のようだった。しかし得点が取れなくなったころから、大量得点の裏に隠れていた守備の問題がクローズアップされてきた。そこから勝てない試合が続く。そしてホームで行われたシャルケとのルールダービー。前半に4点をリードしていたのにも関わらず後半に同点に追いつかれて負けに等しい引き分けに終わった。この試合はドルトムントにとって前半戦のターニングポイントになった試合だっただろう。

 怪我人も多かった。2017-18シーズン開幕前から長期離脱中のロイス選手をはじめ、ゲッツェ選手、カストロ選手、フィリップ選手、ピシュチェク選手がシーズン中に怪我で離脱する。シュールレ選手も怪我でメンバーに入ったり外れたりで試合で起用できるかどうかの計算が出来ない。香川選手も前半戦の終わりは復調を見せたが、2016-17シーズン終了後の代表戦で右肩を脱臼した影響もあり、なんとか開幕には間に合わせた感じには見えたが、リーグ戦序盤はスタメンを外れ途中出場が多くパフォーマンスも低調だった。

ドルトムント崩壊の序章はトゥヘル体制時から始まっていたのではないか?

 トゥヘル体制2期目に少しさかのぼる。主将で不動のセンターバックだったフンメルス選手、香川選手の親友で中盤の要だったギュンドアン選手、2015-16シーズン公式戦で23ゴール、32アシストの大活躍だったムヒタリアン選手。この3人が抜けた2016-17シーズン開幕前から不安の方が大きかった。

 この時補強したのは、デンベレ選手、モル選手、ゲレイロ選手、シュールレ選手、ゲッツェ選手といった前線の選手。守備的な選手といえばバルトラ選手、ローデ選手。純粋なセンターバックはバルトラ選手だけだった。ここからドルトムント崩壊の序章が始まったと私は考えている。それはこのコラムを書いている時も続いている。

2016-17シーズン開幕前の補強が、今シーズンの失速を招くことを暗示していた?

 2016-17シーズン開幕前、純粋なセンターバックの選手を補強していない印象を受けた。中盤の選手やトゥヘル監督(当時)の好みの選手が多く移籍してきたことによりチームのバランスが崩れてしまったのではと疑っていた。このシーズン、リーグ戦は3位で終えるも首位バイエルンとは勝ち点で18ポイントも離されてしまった。UEFAチャンピオンズリーグではバス爆発事件とトラブルはあったが、決勝トーナメント準々決勝敗退。DFBポカールは優勝してなんとか有終の美を飾ったが、シーズンを通して不可解な采配が目立ち、さらにはチーム幹部との確執も報じられ更迭となった。

 監督は解任されたものの、悪い流れは続いてるようだった。2016-17シーズン後に、ボランチのベンダー選手、センターバックのギンダー選手の2選手が移籍に伴い退団。2009年から在籍しているベンダー選手。2016-17シーズンのリーグ戦に29試合に出場したギンダー選手が移籍したことでディフェンス陣への不安の眼差しが私の中でさらに増したことを覚えている。この2選手は2016年のリオ五輪でドイツの銀メダル獲得に貢献し、今後ドルトムントの守備を統率していくものだと思っていたから。

編集長が考えるドルトムント低迷の原因と後半戦に向けての注目ポイント

 ディフェンスの選手の補強はしたがその中にビッグネームはいなかった。フンメルス選手以降、ドルトムントにワールドクラスのディフェンダー(特にセンターバック)がいただろうか。スポティッチ選手、バルトラ選手、ソクラテス選手と良い選手はいるが、総合的にフンメルス選手よりは劣っているように思えてしまう。いまだにフンメルス選手の後釜を見つかっていないのが現在まで続くドルトムント低迷の原因の1つだと私は考えている。

 冬の移籍市場でワールドクラスのディフェンダーを獲得するのは難しいだろう。もし獲得出来たとしても、ウィンターブレイクは短く連携面で不安が残るので、今のメンバーで連携を深めていくことが必要になるだろう。後半戦に向けてペーター・シュテーガー監督がどこまで守備陣を立て直すのか…その手腕に期待したい。

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