5バックは本来、日本代表が強豪国(ブラジル、ドイツ、フランス、スペインなど)とW杯で対戦する時に採用してもらいたいフォーメーションの1つだ。
しかし、日本人の文化に根付いている「スポーツマンシップに則り、正々堂々と戦う」という信念が邪魔をする。
結果としてサッカーにおいては点の取り合いを挑む試合展開になる。
それをサポーターも望んている風潮もあるので、W杯グループリーグ初戦でW杯優勝を経験している8か国(ブラジル、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、イングランド、アルゼンチン、ウルグアイ)との対戦が実現しない限り、現実的に難しいだろう。
5バックは、日本代表にとって対戦相手が取ってくる戦術としても最も苦手とするフォーメーションだ。
アジアカップ2019でも明確となってきたが、カタールW杯アジア予選までに少しでも解決の糸口を見つける必要がある。
目次
クラブチームでも5バックを崩すのは難しい
2019シーズン、Jリーグ開幕戦、ヴィッセル神戸対セレッソ大阪の一戦でのこと。
ヴィッセルの前線には、VIP(イニエスタ、ビジャ、ポドルスキー)の3枚が並ぶ。
普段は中盤に位置するイニエスタ選手をゼロトップに配置する奇策をリージョ監督は採用してきた。
少し意外に感じたが、これまで4バックが基本フォーメーションだったセレッソが5バックを形成してきたことの方が驚いた。
おそらくVIP3人を自由にさせないための3バック+両ウィングバックによる5バックになったと思われるが、今シーズンからセレッソの監督に就任したスペイン人のロティーナ氏だったからとれた戦略かもしれない。
ヨーロッパの監督はサッカーを知っている。を思わせてくれた。
イニエスタ選手、ビジャ選手とは同郷ということもあり、スペースを使われることがどれだけ自分たちの脅威になるかを理解した上での采配だったかもしれない。
試合はというと、セレッソが後半に、都倉選手をワントップに入れて柿谷選手を中盤に下げたことで、ボールが回り出すように虎の子の1点に繋がった。スコアレスで試合終盤まで来れば、勝ちにいくプランも準備していたのだろう。
5バックは勝利を諦めた戦術ではない。弱者が強者に対抗する戦略の1つである。
ヴィッセルは攻撃陣が機能せず、得点を奪うことができなかった。
イニエスタ選手、ビジャ選手、ポドルスキー選手のワールドクラスの3選手が前線にいても、守りをしっかり固めれば勝機は見いだせる。と教えられた試合だった。
ヴィッセルの誇るVIPでも5バックを崩すのは難しい。
では、どうすれば5バックを崩すことが出来るのか?
編集長が考える5バックの崩し方
①フォーメーション
「4-2-3-1」がベースなら、最低でも3トップにする必要があるので「4-3-3」がベター。
中盤の3枚は、ボランチまたはアンカーを1人残してインサイドハーフ2枚も攻撃重視でプレー。
②ピッチ上にいて欲しい選手のタイプ
・ドリブラー
・セットプレーを任せられるキッカー
・長身ポストプレイヤー
・シャドーストライカー
・前線からの守備をさぼらない選手
・オーバーラップを繰り返すスタミナモンスター
③イレブン全員の共通事項
・ワンタッチ、ツータッチ以内
・パススピードを上げる
・オフザボールの動きを怠らない
・少しでもスペースがあればドリブルで仕掛ける
・ゴールが見えたらミドルレンジからでもシュートする
あとは、相手の守備陣を見て、ドリブルについてこれていない選手、イエローカードを1枚もらっているため球際激しく来れない選手など状況に応じて判断し、5つの壁のうち1つを崩して仕掛ける。
1つ崩れれば、立て直す瞬間に隙が出来るのでそこを正確についてゴールに繋げれるかがキーポイント。
5バックは、リーグ戦ではあまり見慣れない戦術である。
Jリーグの試合序盤から採用していたチームはあまり記憶にない…。
一方、代表戦では格上と戦う時だけ当たり前のように守備的戦術が採用される。
W杯出場をかけた大事な試合では、勝ち点の取りこぼしは許されず、得失点差によって出場権を逃す場合もあるので、当然といえば当然だ。
日本もアジア予選では、5バックを採用するチームと対戦することもある。
今の日本代表に必要なのは、FIFAランク上位の強豪国とのマッチメイクより、W杯にも出場していて、3バックまたは5バックを主戦に堅守速攻のサッカーをしている国なのではないだろうか。
ベストメンバーのコスタリカと親善試合を
代表チームで鉄壁のディフェンス力を誇るのは、今でも昔でも「イタリア」以外考えられない。
ネスタ選手、マルディーニ選手、カンナバーロ選手の3バックにGKブッフォン選手が君臨し構成させていた『カテナチオ』は私の記憶の中に今でも鮮明に残っている。
ネーションズカップの影響もありヨーロッパの国々と親善試合を行うことが難しくなり、強豪イタリアとのマッチメイクもより一層難しくなっている。
そこで提案したいのが「コスタリカ」との親善試合だ。
2014年ブラジルW杯ベスト8の躍進、2018ロシアW杯ではグループリーグ敗退とはなったものの、ナバス選手を中心とした守備は、ブラジル、スイス、セルビアを最後まで苦しめた。
ただ、日本がコスタリカとマッチメイクをしていないといえばそうではない。
直近では2018年9月11日に、日本代表は大阪でコスタリカ代表と親善試合を行っている。
この試合は、9月7日に札幌で行われるはずだったチリ戦が地震の影響で中止となり、実質的に森保ジャパンの初戦となった試合だ。
結果は3対0で勝利し、日本の新たな中盤の三銃士(中島、南野、堂安)が形成させた試合でもある。
5バック対策になぜ「コスタリカ」を推奨するのかというと、この試合、レアル・マドリードに所属するコスタリカ代表の守護神ナバス選手が欠場しているから。
3対0の勝利は、コスタリカがベストメンバーではなかったのも一因だ。
コスタリカのロシアW杯での戦い方を見ていて気になったのが「守備のやり方がGKありきの戦術となっているのではないか?」という点だ。
ナバス選手のセービング力あってのことだが、ディフェンスがボールを奪うのではなく、相手にプレーの選択肢を限定させるなど組織的な守備をしている印象が強い。
コスタリカの基本フォーメーションは「5-2-3」
堅い守備からのカウンターを得意とするチームで、日本がやや苦手としている戦い方をしてくる。
是非、ナバス選手が出場するコスタリカと親善試合を行ってほしいものだ。
そのためには国際親善試合といえど、日本開催ではなく『海外遠征』が必要になるだろう。
あとがき
アジアカップを見ても、日本を相手に5バックを形成するチームは少なくなかった。
トルクメニスタン、ベトナムは日本と対戦した試合では、狙いがはっきりしていた。
当初、日本が優位と大方が予想していても試合展開としてはギリギリでの勝利だったのは記憶に新しい。
現状なら、カタール代表はマッチメイクの候補として最適だ。
開催国は予選を免除されるので、同大陸でもアジア予選の前に親善試合を組むことは可能。
アジアカップ決勝のように結果も内容も敗れることになれば、日本代表の2022カタールW杯出場は危ういだろう。