日本人選手が世界のトップチームと互角に戦えるのは70分(後半25分)まで。という仮説を立てた。
ヨーロッパ5大リーグ(イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ、フランス)に所属する日本人選手の試合動向を毎節必ずチェックしているが、先発フル出場している日本人選手が少ないことが気になっていた。
試合内容やポジション、各チームの日程や選手のコンディション、プレー強度など様々な状況が絡み合っているため確実に断言できるものではないが、攻撃的な選手に限っていえばこの仮説に該当するものが多いのも事実だ。
目次
5大リーグに所属する日本人選手の状況
ワールドクラスの選手が集まるヨーロッパ5大リーグが、日本人選手の現在地を正確に表している。
2020-2021シーズン、2月26日時点までのリーグ戦の成績から、あくまでも表面的な数値を元に仮説を検証していく。
(*注)
先発出場した試合数、フル出場した試合数、途中交代した時間帯などから平均値を算出している。
今回、出場試合数は検証に含まない。理由は途中出場で1分でもプレーすると出場試合数に加算されてしまうため。
攻撃的ポジションの選手
(イングランド)
リバプールからサウサンプトンにレンタル移籍した南野拓実選手。
リバプール在籍時は出場機会が限られていたため判断が難しい。マネ選手、サラー選手、フィルミーノ選手の3トップに割って入るのがいかに困難か現実を突き付けられた。
FA杯、リーグ杯では出番を与えられることはあったが、リーグ戦では後半からの途中出場がほとんど。リーグ戦でフル出場した試合が2試合あったものの、過密日程のための主力温存の意味合いが強いため検証対象から外している。
サウサンプトンに移籍してまだ5試合しか消化していないが、先発出場が3回と出場機会は増えている。それでも3回先発した試合の内2試合は、62分、76分に交代している。
この2試合は同点の場面での交代となっているが、接戦での残り15分のプレー強度に課題があるのかもしれない。76分に交代した試合では、先制ゴールを決めていただけに少し気にはなるところだ。
先発出場 | フル出場 | フル出場率 | 途中交代 | 平均値 | |
南野拓実 | 3 | 1 | 33% | 2 | 約76分 |
(スペイン)
エイバルの乾貴士選手、武藤嘉紀選手、ビジャレアルからヘタフェに移籍した久保建英選手、ウエスカの岡崎慎司選手。日本を代表するストライカーとサイドアタッカーが在籍しているが、結果を残しているとは言い難い。
乾選手、武藤選手は共にエイバルでシーズンを通して出場機会は得られている。
乾選手は、先発出場19試合でフル出場は7試合とまずます。
途中交代の時間帯を見ると、60分、84分、73分、88分、70分、45分、70分、72分、60分、68分、89分、45分、45分と1試合平均に換算すると約75分での交代となっているが、仮説通りとも捉えることが出来る。また好不調の波が激しいのか前半だけで退く試合も多い。ここまで1ゴールと数字も残せていないのも気になるところだ。
武藤選手はシーズン開幕後にイングランド1部リーグのニューカッスルからレンタル移籍で加入したが、ここまで1ゴール1アシストと数字としては物足りない。
先発出場は12試合あるものの、フル出場は3試合と信頼を勝ち取っていないように思う。途中交代の時間帯を見ると、62分、76分、57分、77分、78分、82分、45分、77分、60分とこちらも1試合平均に換算すると約75分での交代となっているが、仮説通りとも捉えることが出来る。
久保選手は、苦しい状況が続いている。ビジャレアルではほとんどが途中出場で、プレー時間も短かったため検証対象から外す。
冬の移籍市場でヘタフェに移籍し、最初の4試合は先発出場するもののフル出場は出来ず、80分、69分、79分、59分に交代。その後は再びベンチスタートから途中出場の流れになっている。
足元の技術ではある程度通用しても、フィジカルの強度がラ・リーガで90分戦うレベルに達していないのか。まだ19歳の選手なので今後の成長を見守るしかないが、リーグ戦でゴールまたはアシストを記録することで浮上するきっかけになればと思う。
ウエスカの岡崎選手はシーズン序盤は申し分ないプレーだったが、怪我をしてから本調子には戻っていないのかもしれない。
怪我からの復帰後は途中出場が多かったのもあるが、リーグ戦で先発出場は13試合だが、フル出場はここまで3試合と少ないのは気になる。途中交代の時間帯を見ても、80分、70分、40分、86分、61分、80分、57分、54分、62分、60分とこちらも1試合平均に換算すると約72分での交代となっている。
特に今年に入り4試合連続で先発出場を果たすものの、57分、54分、62分、60分と後半の早い段階で交代となっていることだ。
試合状況で見ると同点の場面で2回、2点リードしている場面で1回、1点ビハインドの場面で1回とバラバラだが、リーグ下位に沈むチームの状況を考えると、同点の場合では勝ち越しゴールを奪うため、リードしている場面では確実に逃げ切るため、ビハインドの場面では同点に追いつくために、FWを変える流れになることは仕方ないのかなと思う。1番の問題は、今季ここまで1ゴール1アシストとFWとして数字を残せていないことだろう。
先発出場 | フル出場 | 途中交代 | 平均値 | |
乾貴士 | 19 | 7 | 12 | 約75分 |
武藤嘉紀 | 12 | 3 | 9 | 約75分 |
久保建英 | 4 | 0 | 4 | 約79分 |
岡崎慎司 | 13 | 3 | 10 | 約72分 |
(ドイツ)
ブレーメンの大迫勇也選手、フランクフルトの鎌田大地選手、ビーレフェルトの堂安律選手。日本代表で前線のキープレーヤーになる選手が揃って在籍しているブンデスリーガではあるが、選手によって評価は分かれている。
大迫選手は、ここまで先発出場が6試合あるもののフル出場は無い。
途中交代の時間帯を見ても、45分、84分、80分、73分、72分、45分と1試合平均に換算すると約74分と交代となっているので、試合に出れば及第点のプレーはしているのかもしれないが、0ゴール1アシストとFWとして結果を残せていないは事実。途中出場は10試合あるもののプレー時間が短く、このままでは来季は戦力外の可能性も否定できない。
鎌田選手は、ここまで先発出場が18試合でフル出場は6試合。
途中交代の時間帯を見ると、88分、87分、45分、87分、63分、76分、80分、77分、82分、83分、80分、90分と1試合平均に換算すると約86分での交代となっているので、仮説を上回る結果を残している。
ただ、今年に入って先発しても途中交代となっているケースが増えているのは気になる。ゴールやアシストは記録してはいるが、年間を通して安定したパフォーマンスが課題なのかもしれない。
堂安選手は、オランダ1部リーグのPSVからレンタル移籍で加入したが、先発出場21試合でフル出場は9試合とまずます。
途中交代の時間帯を見ると、77分、73分、73分、88分、90分、65分、82分、75分、90分、89分、41分、60分と1試合平均に換算すると約83分での交代となっているので、仮説を上回る結果を残している。
※ここでの90分は、後半アディショナルタイムでの交代を意味しているものでありフル出場には含まない。
チームの主力になり、ここまで3ゴール2アシストと数字は若干物足りないものの結果を残している。あとはチームを1部残留に導くことが出来るのかが終盤に向けての焦点になる。
なお、ウニオン・ベルリンの遠藤渓太選手は出場時間が121分(先発1試合,フル出場なし,途中出場8試合)と少ないため、ビーレフェルトの奥川雅也選手は移籍してきて間もないため、今回は検証対象から外している。
先発出場 | フル出場 | 途中交代 | 平均値 | |
大迫勇也 | 6 | 0 | 6 | 約74分 |
鎌田大地 | 18 | 6 | 12 | 約86分 |
堂安律 | 21 | 9 | 12 | 約83分 |
守備的ポジションの選手
攻撃的ポジションの選手と比較は出来ないが、余程のことが無い限り交代カードを使わないとされるのが守備的ポジションの選手だ。そのため「フル出場率」も検証に加えることにする。
(イタリア)
サンプドリアの吉田麻也選手、ボローニャの冨安健洋選手。日本代表でセンターバックとしてコンビを組む2選手がカルチョの国で結果を残している。
吉田選手はここまで先発出場が17試合でフル出場は13試合。フル出場率76%。
途中交代の時間帯を見ると、45分、74分、81分、45分と1試合平均に換算すると約68分だった。試合状況から見ると前半だけで退いた2試合は、前後半でシステム変更を行った場面もある。74分、81分で交代となった試合は不慣れな右サイドバックでのプレーだったので割引が必要。
冨安選手はここまでリーグ戦全試合先発フル出場を続けており、ビッククラブからのオファーもあるという。チームではセンターバックや右サイドバックでのプレーが多いが、日本代表選手で今一番ワールドクラスに近い選手なのかもしれない。
先発出場 | フル出場 | フル出場率 | 途中交代 | 平均値 | |
吉田麻也 | 17 | 13 | 76% | 4 | 約68分 |
冨安健洋 | 23 | 23 | 100% | 0 | – |
(ドイツ)
フランクフルトの長谷部誠選手とシュトゥットガルトの遠藤航選手。日本代表の不動のボランチとして地位を築いてきた2選手はドイツでも評価を上げている。
長谷部選手はここまで先発出場が18試合でフル出場は13試合。フル出場率72%。
途中交代の時間帯を見ると、77分、66分、71分、76分、73分と1試合平均に換算すると約80分での交代となっているので、仮説を上回る結果を残している。
2021年になって途中交代の試合が増えた印象だが、ここ2試合はフル出場と代表を引退して所属チームに専念することで年齢による衰えを感じさせないパフォーマンスを見せている。
今季海外組で別格のパフォーマンスを見せている1人に遠藤航選手を挙げたい。
ここまで先発出場が22試合でフル出場が21試合。途中交代となった1試合は、現地時間2021年1月10日にアウェーで行われたアウグスブルク戦、1対4と3点リードもあり後半アディショナルタイムに交代したのみと圧巻のパフォーマンスを見せている。フル出場率は計算上は95%実質100%だ。
先発出場 | フル出場 | フル出場率 | 途中交代 | 平均値 | |
長谷部誠 | 18 | 13 | 72% | 5 | 約80分 |
遠藤航 | 22 | 21 | 95% | 1 | 実質90分 |
(フランス)
マルセイユの酒井宏樹選手、長友佑都選手、ストラスブールの川島永嗣選手。日本代表の両サイドバックと守護神が奮闘している。
酒井選手は、ここまで先発出場が23試合でフル出場は19試合。途中交代の時間帯を見ると、79分、88分、45分、66分と1試合平均に換算すると約77分での交代となっている。
本職の右サイドバックに加え不慣れな左サイドバックでもプレーもある中で、フル出場率が82%と高い水準を出せるのはそれだけプレーが安定していて、ベンチからの信頼もあるということだ。
長友選手は、シーズン開幕後にマルセイユに入団。ここまで先発出場が13試合でフル出場は5試合。フル出場率38%。
途中交代の時間帯を見ると、60分、77分、56分、74分、79分、66分、56分、90分と1試合平均に換算すると約77分での交代となっている。
※ここでの90分は、後半アディショナルタイムでの交代を意味しているものでありフル出場には含まない。
前所属先のガラタサライで試合に出ていなかった時期が長かったため、試合勘を取り戻すのに時間が要したみたいだが、直近の試合ではフル出場も増えてきているのでリーグ終盤のパフォーマンスに期待したい。
川島選手は、ここまで22試合中18試合で先発フル出場。リーグ戦での試合出場率(フル出場率)は80%を越えている。
ゴールキーパーは怪我でも無い限り90分間プレーするため今回の検証には当てはまらないが、5大リーグでの歴代日本人最高ゴールキーパーは川島選手で間違いない。
なお、ニームの植田直通選手は移籍してきて間もないため、今回は検証対象から外している。
先発出場 | フル出場 | フル出場率 | 途中交代 | 平均値 | |
酒井宏樹 | 23 | 19 | 82% | 4 | 約77分 |
長友佑都 | 13 | 5 | 38% | 8 | 約77分 |
川島永嗣 | 18 | 18 | 100% | 0 | – |
検証結果からの見解
今回使用した数値は、先発出場したが途中交代となった試合において、プレー時間を1試合平均に換算したものだ。フル出場した試合、途中出場したは除いている。
途中出場から決勝ゴールを決める、アシストする。といった明確な結果が出ているなら追記で記載したかったが、今シーズンに限って言えば、現時点では見つけることはできなかった。
所属クラブでの試合で「途中交代」となるには必ず何か理由がある。
特に攻撃陣に対しては変化が必要だと考える。
攻撃陣で先発機会が多いのに途中交代となるのは、日本人選手の勤勉さもあるかもしれない。ハードワークを怠らないため、後半残り25分を過ぎた辺りからバテてしまい交代せざるを得ない状態になっていることも考えられる。
だから与えられた時間で結果を出すことが求められる。
交代枠も1試合に使える数は限られているので、無駄に使いたくないのがベンチの思惑だろう。そんな中でも日本人選手を先発起用に踏み切る首脳陣には、日本人選手だからこそ求められているものが必ずあるはずだ。
ここまでは抽象的な予測だが、最も効果的なのは5大リーグで二桁得点決める日本人ストライカーが現れること。そうなれば自然と日本人選手に対する風向きは大きく変わるだろう。
守備陣については現状のパフォーマンスを維持することが最低条件。
遠藤選手、冨安選手に関してはオファーがあるなら、CL,ELで決勝トーナメントに毎年残る常連のビッククラブに移籍して、そこでどこまでプレーできるのか見てみたい。今シーズンのパフォーマンスなら可能性はゼロではない。
代表戦にもつながる
日本代表メンバーの中心がほぼ海外組での構成となってはいるが、W杯でベスト8の壁を越えるのはまだまだ厳しい位置にいると考える。
特にアタッカー陣がヨーロッパ5大リーグであまりフル出場できていないのも問題だが、仮説の通り「日本人選手が世界のトップチームと互角に戦えるのは70分(後半25分)まで」が証明されたことで、より一層問題が深刻化するだろう。
守りを固めてカウンターから1点を狙うサッカーなら、組み合わせ次第では番狂わせを起こすことも可能かもしれないが、日本の悪い伝統である得点力不足が浮き彫りになり、さらに守備に走り回って攻撃に力を残すことができず、PK戦まで縺れ込むのが現実的だろう。
では真っ向勝負で打ち合いで挑んだとしたら、どうなるだろう。
それこそ70分までは良い試合をしたかもしれないが、最後は勝ち越しゴールを奪われて敗戦になるだろう。
このように予測できるのは、2013コンフェデレーションズ杯・グループリーグ第2戦の対イタリア代表、2018ロシアW杯・決勝トーナメント1回戦の対ベルギー代表での敗戦があるからだ。もうグッドルーザーは懲り懲りだ。
私の中でこの2試合の記憶が今でも強烈に残っているから、70分以降の戦い方を変えていかないとまた同じような結果になるのではないかと戦々恐々としている。
【例題】
では、90分間で世界と互角以上に戦うためにはどうすれば良いか?
W杯でグループリーグを突破し決勝トーナメントに進出したという前提で考える。
まずは、90分間で決着をつけること。現在のレギュレーションなら延長までいけば確実に負ける。
次に理想のゲームプランを遂行すること。
前半15分までに1点を奪って主導権を握り、後半15分までに追加点を奪いリードした状況で終盤に突入する。
残り20分はベンチワーク。効果的な交代カード、状況見ての戦術変更で間違いは許されない。
フィジカルやスピードの差は試合が進むに連れて大きくなるので、その差を埋めるために日本の強みではあるチームワークで乗り切るしかない。
最後に、時間を使って賢く逃げ切ること。
日本人の美徳にある「スポーツマンシップ」に反することだが、勝つためには手段を選ばない。
例えば、ロシアW杯グループリーグ最終戦のポーランド戦で見せたボール回しは、決勝トーナメント進出のための手段だった。これには賛否両論出たが、結果的には間違いでは無かった。世界大会では日本人の潜在意識の中にあるキレイゴトは通用しない。
あとがき
日本人選手が世界のトップチームと互角に戦えるのは70分(後半25分)まで。という仮説を立てたが、実際にデータとしても証明されていて、協会の方でも把握されているという情報はある。
問題はこれをどう改善するのか?明確なものはまだ示されてはいないが、改善策の効果によって今後の日本人選手個人の飛躍、さらには日本代表の躍進につながることは間違いないだろう。
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