イニエスタとトーレスがJリーグに運んできた風

 国際AマッチデーということでJリーグは中断期間に突入したが、8月のJリーグの盛り上がりはロシアW杯の日本代表の熱気が伝染したのではなく、ヴィッセル神戸にはイニエスタ選手、サガン鳥栖にはトーレス選手が加入したことで、この2チームの注目度は格段に上がり、Jリーグも盛り上がってきた。

 ニュース番組のスポーツコーナーでJリーグのハイライトを放送するとき、必ずといってよいほど、ヴィッセル神戸とサガン鳥栖の試合が流れているように感じている。

 ただ1つ疑問がある。トーレス選手はFWだから得点シーンがピックアップされてもよい。
 しかしイニエスタ選手も同様にゴールシーンだけ流すのはどうだろうか。

 イニエスタ選手の真骨頂はパスだと思っている。それに繋がるトラップ、ドリブル、ボールを受ける位置…など注目してもらいたいところはたくさんある。
 リーグ戦初ゴールは、一連の動作がきれいにつながっていたのでハイライト映像でも良いモノが見れた。
 これをアシストの場面でも見せてほしいと願う。

 このように感じるのは、イニエスタ選手、トーレス選手がJリーグに追い風を運んできたと思っているからだ。

アンドレス・イニエスタ選手、フェルナンド・トーレス選手の加入後

 元スペイン代表で2010年南アフリカW杯優勝メンバーで、前所属チームがバルセロナにアトレティコ・マドリード。ワールドクラスの選手だということは疑いようがない。

 Jリーグでのプレーを観ても、他の選手と比べても次元が違うように感じる。日本代表クラスの選手がマッチアップしても、ものともしていなかった。

 個の力は絶大だがチームとしてどうだろうか?
 ピッチ内では選手間のプレーのズレがまだ修正されているようには見えなかった。
 9月7日現在、ヴィッセル神戸はリーグ7位、サガン鳥栖はリーグ16位と全体としても波に乗っているとは言い難い。

 ヴィッセル神戸は来期ACL出場権が見えていたが、リーグ戦で2連敗を喫しやや失速傾向にある。
 中断前のリーグ戦で、イニエスタ選手が足に違和感を訴えて交代したこともあり、怪我の回復具合が気になる。さらにポドルスキ選手も前節レッドカードで退場処分となり、中断明けの試合が出場停止となる。
 ヴィッセル神戸にとって2大エースを欠いた中で、どんな試合ができるのか。リーグ終盤戦の正念場を迎えることになった。

 一方、サガン鳥栖はトーレス選手についにゴールが生まれる。
 入団が決定し、すぐにチームに合流した7月は連携面での不安が見られたが、天皇杯4回戦で来日後公式戦初ゴールを決めると続くリーグ戦でもゴールを決め、徐々に調子を上げてきている。
 特に福田晃斗選手からのアシストで2ゴールを決めている点では、このホットラインからゴール量産があるかもしれない。

 この2チームだが、1人のワールドクラスの選手が加わるだけでロシアW杯中断前とは別のチームになったように感じる。(※中断期間にチーム内でも多くの移籍があったがそこは今回のコラムでは触れないでおく)

 言葉で言い表すと「ポジティブな空気感」としか言えないが、画面を通してだが伝わってくるものは以前と異なっている。

目覚めた元ブラジル代表ジョー選手

 イニエスタ選手とトーレス選手以上のインパクトを残したのが、名古屋グランパスに所属するジョー選手だ。

 2014年ブラジルW杯メンバー。
 2013年コンフェデレーションズカップのグループリーグ初戦でブラジル代表と日本代表が対戦したときに、トドメの3点目を決められたのを覚えている…。

 イニエスタ選手、トーレス選手のインパクトが強すぎて麻痺しているだけだが、ジョー選手にポドルスキ選手がJリーグでプレーしているのも凄いことなんだけどな…。

 ジョー選手は、8月1日のべガルダ仙台戦から、中断前9月1日のジュビロ磐田戦まで6試合ゴールを決めた!(※8月19日にサガン鳥栖戦は累積警告のため出場停止)

 6試合で12ゴールというのも驚異的な数字だ。Jリーグ得点ランキングも一気に2位まで上がってきた。現在1位のパトリック選手(サンフレッチェ広島)とは1ゴール差と得点王も射程圏内だ。

 チームも8月のリーグ戦は全勝と、リーグ最下位から11位にまで急上昇した。
 ジョー選手は2018シーズン開幕前に入団が決まり、リーグ前半戦はここ最近のような圧倒的なプレーは少なかった。前半戦はチームが低迷していたのも影響していたのかもしれない。

 中断期間を上手く利用してチームを仕上げてきた風間監督の手腕も凄いが、この勢いはどこまで続くだろうか。(※2回目だが、中断期間にチーム内でも多くの移籍があったがそこは今回のコラムでは触れないでおく)

あとがき

 イニエスタ選手とトーレス選手がもたらした風がジョー選手にも火をつけた。
 またポドルスキ選手もイニエスタ選手が加入したことで左足からの強烈なシュートが増えたように思える。

 これが「共鳴する」ということなのだろうか。
 ワールドクラスの選手が近くにいることで自然と抑えてしまっていた本来の力を解放したともいえる。この相乗効果が日本人選手に良いきっかけをもたらして欲しいと思う。

 9月6日、DUARIG Fリーグ(日本フットサルリーグ)の試合に参加するため、元ブラジル代表のレジェンド、ロベルト・カルロス氏が来日した。
「悪魔の左足」と称されるフリーキックといえばもうお分かりだろう。レジェンドプレーヤーがFリーグにどんな風をもたらしてくれるのだろうか。

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