VAR時代における審判の判定基準

 テクノロジーの進化と共に、サッカーの審判補助システムも増えてきた。

 現在その代表格といえるのは「VAR」だ。
 VARとはビデオ・アシスタント・レフリーのこと。

 主審を助ける副審のような位置づけだが、VARの使用を決めるかどうかは主審の裁量による。

※VARが発動できるケースは4つのみ。
・得点の有無
・PKの有無
・レッドカード相当の行為なのか確認
・間違った選手への処分ではなかったのか確認

 他にもGLT(ゴール・ライン・テクノロジー)がある。
 今後はオフサイドを判定するシステムが導入されるかもしれない。

 VARやGLTは、サッカーの審判補助システムは便利である一方、特にVARは、時として審判のジャッジを誘導し、試合の勝敗を大きく変えてしまう問題も起きている。

チャンピオンズリーグでも賛否両論

 2019年2月13日に行われたラウンド16 アヤックス(オランダ)対レアル・マドリード(スペイン)の一戦でVARによるゴール取り消しがあった。

 前半37分、アヤックスのタグリアフィコ選手がヘディングでゴールを決めたと思われたが、

「アヤックスのタディッチ選手がオフサイドポジションにいたこと。さらにタディッチ選手がレアル・マドリードのGKクルトワ選手のプレーを妨げる位置取りをしていたこと。という理由でゴールを取り消した」

 とUEFAを通じて声明を発表した。

 この試合を主審を務めたのはスロベニア出身のダミル・スコミナ氏。
 日本サポーターにとってゆかりのある審判でもある。
 2018ロシアW杯では、グループリーグで日本対コロンビアの主審を務めた人物だ。

 これまでユーロ2012、2016。2016-17シーズンのヨーロッパリーグ決勝(アヤックス対マンチェスター・ユナイテッド)、2017-18シーズンのチャンピオンズリーグ準決勝2nd(ローマ対リバプール)といったビックマッチも担当している欧州ではトップクラスの国際審判の1人だろう。

 ダミル・スコミナ氏、アヤックスにとっては良いイメージのない審判かもしれない。
 2016-17シーズンのヨーロッパリーグ決勝でマンチェスター・ユナイテッドと対戦した時は、0対2で敗れ準優勝に終わっている。

 といっても試合内容は、アヤックスがユナイテッドに対して完全な力負けだったことから、審判のジャッジが試合結果を左右したとは言い難い。
 だが、今回の1件で少なからず遺恨が生まれたことは間違いないなさそうだ。

 筆者も問題のシーンを映像で見直したが、すごく微妙な判定だった。

 個人的な見解としては、オフサイドというより、キーパーチャージに近いかな?という印象です。

 ヨーロッパ最高峰の試合でも、VARによる審判の判定に物議を醸す事態になっている。

中東の笛

 サッカー日本代表戦においてよく聞かれる言葉です。
 特にW杯アジア予選で日本が中東の地で試合を行う時は、中東チームに有利な判定が下されることもあり、耳にする機会が増えます。

 ですが「中東の笛」といっても、一概に中東全ての国が優遇されるわけではありません。

 これについては中東情勢を理解していると結構納得できるものもあります。

 中東=イスラム教にはふたつの宗派があるためです。
 スンナ派とシーア派。世界史の授業なんかで聞いたことがあるかもしれません。

 簡単にいうとシーア派はイラン。
 その他の中東国家はほぼスンナ派。

 ここからは推測でしかないことを前提に進めます。

『アジアカップ2019、日本対サウジアラビア、日本対カタールの試合で主審を務めたのはウズベキスタン出身のラフシャン・イルマトフ氏。
 アジア最高のレフェリーと称されていますが、アジアカップや中東国の試合においてはそのレフェリングが明確に異なる場面はいくつもありました。

 ウズベキスタンはスンナ派が多い国です。
 スンナ派の大国はサウジアラビア、UAE。
 そこでサウジアラビア戦の不可解な笛は少し理解ができるのではないだろうか。

 しかし、実はカタールもスンナ派。
 通常ならばサウジアラビア戦と同様になるのですが、カタールはイスラム教の中でも独自路線を歩んでいます。

 決定的な出来事として、2017年6月5日、サウジアラビアを中心としたペルシャ湾岸諸国、エジプトなどアフリカ大陸にあるイスラム国家の一部は、カタールに対して国交断絶を表明した。

 その理由として、カタールがイランとの関係を継続していることが挙げられている。
 ちなみにサウジアラビアはイランと国交断絶。UAEは大使召還。

 これらを踏まえると同じ中東国家、スンナ派であっても、サウジアラビア戦、カタール戦での、レフェリーのスタンスの違いに理解ができるのではないだろうか。

 もし決勝の対戦カードが日本対UAEとなっていて、主審がイルマトフ氏だったら、日本はピッチ内外ともに完全アウェイだった可能性もあったと推測しています。』

 決勝のカタール戦、1対2と日本が1点ビハインドの後半38分、残り時間もまだあり、日本が同点に追いつけそうな流れの時間帯に、VARでペナルティエリア内でのハンドを取られ、カタールにPKを与えるという判定が下された。

 カタールがPKを成功し勝敗が決定的にはなってしまったが、試合中ほとんどの場面で不可解な笛が吹かれることはなかった。

 今後は「中東の笛」ではなく「中東のVAR」にも気をつける必要がありますね。

ロスタイム18分の謎

 2018シーズンJリーグ第33節、清水エスパルス対ヴィッセル神戸の一戦で起こった。

 2対3と神戸1点リードで後半ロスタイムを迎える。
 表示は「4分」だったが、ロスタイムで消化した時間は18分50秒だった。

 ロスタイムがなぜ18分を超えたのか?

 この時、ピッチで起こった詳細は下記よりご覧ください。

退場に激高しGK投げ飛ばす/大荒れロスタイム経過
引用元:日刊スポーツ

 試合の詳細を振り返っても、審判の判定基準に疑問を抱くことしかできなかった。

 この試合の主審を務めたのは、柿沼亨氏。埼玉県出身。

 2014年からJリーグでの主審を務めている。
 2014年はJ3、2015年からはJ2も担当。2018年シーズンに初めてJ1を担当することになった。

 2018第6回JFAレフェリーブリーフィングでは、柿沼主審の判断ミスと、審判団のコミュニケーション不足ということで落ち着いたようだが、1つの結論を出しただけで該当審判団への処分が甘いと感じる。

 柿沼主審の判断ミスというのは「負傷治療のため中断した時間をロスタイムに上乗せした」というもの。J1の審判を務めた最初の年であったとしても、起こってはならないミスだ。
「ロスタイム18分」のニュースは世界中に発信され、Jリーグの審判のレベルの低さを露呈した形となった。

 この部分については、いくらテクノロジーが進化したところで審判のレベルが一定基準を越えていなければ、審判補助システムも機能はしないだろう。

 両クラブチームにとっては踏んだり蹴ったりの結末となった。

 アディショナルタイム14分に、ヴィッセル神戸は同点ゴールを決められ勝ち点3を逃した。
 また途中出場のウェリントン選手がイエローカード2枚で退場処分となり、出場停止処分が2019シーズンまで持ち越されてしまっている。

 清水エスパルスにとっても、試合後に『2018ホーム最終戦エンディングセレモニー』が行われることになっていた。さらに2018シーズンで引退する兵頭昭弘選手の引退セレモニーも行われたのだが、後味の悪い結末となってしまった。

 Jリーグの試合を観ていると「流しても良さそうな接触プレーで笛を吹いてファールを取り試合を止める」という印象を受ける。

 アドバンテージを取らずにファールで何度もプレーを止められると、審判が試合の流れを止めてしまっている気がしてならない。

 ゴールに直結しないレフリングなら後々大きな問題にはならないかもしれないが、1度ゴールが認められた後の取り消しは物議を醸した。

 2018年シーズンでは、3月31日に行われた川崎フロンターレ対サンフレッチェ広島の試合で広島1点リードの後半アディショナルタイムに、川崎の同点ゴールがオフサイドによりゴールが取り消される場面があった。

 だが、スロー映像を見てもオフサイドには見えなかったのが、個人的な見解だ。
 Jリーグではこの時VARは導入されていなかったが、2019シーズンから1部の試合でVAR導入が決定した!

 しかし、ルヴァンカップの準決勝、準決勝、決勝の12試合とJ1参入プレーオフ1試合の全13試合だけで、リーグ戦には導入されなかったのは残念に思う。

 まもなくJリーグ2019シーズンが開幕する。
 審判のジャッジにも注目しながら、ピッチの上では、アジア最高峰のリーグだと証明できる試合を観たいものです。

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FOOTBALL NOTE編集長。1983年6月13日生まれ。岡山県出身。フットボールをテーマにした読者の知的好奇心を刺激するコンテンツ作りに着手し「FOOTBALL NOTE」を立ち上げる。コンセプトは「世界のフットボール情報がここにある」※お問い合わせはコチラからどうぞ