今回、移籍市場における目玉選手はノルウェー代表フォワード、アーリング・ハーランド選手が、ドルトムントからマンチェスター・シティへ移籍した。
移籍金は推定5,100万ポンド(約74億円)と、当初想定されていた推定6,300万ポンド(約101億円)の大型移籍にはならなかったようだが、マンチェスター・シティから移籍する際には200億円を超える高額な契約解除違約金が設定されていると噂されており、若干21歳にして今後の活躍が大いに期待されている。
センターフォワードといえば、ポーランド代表のロベルト・レヴァンドフスキ選手がバイエルン・ミュンヘンからバルセロナへ移籍した。
移籍金は推定4,500万ユーロ(約63億円)+出来高500万ユーロ(約7億円)となったようだ。現在34歳の年齢を考えると4年契約は異例だが、バイエルン在籍時の2014-15シーズンから2021-22シーズンまでの8シーズン、リーグ戦だけで238ゴールを奪った得点力に期待がかっている証拠だと思う。
私が個人的に驚いたのは、ブラジル代表のカゼミーロ選手がレアル・マドリードからマンチェスター・ユナイテッドへの移籍したことだ。
移籍金は推定6,000万ポンド(約97億円)と守備的MFの選手としては破格の金額となった。第3者から見れば、現在30歳とキャリアでも最高の時期になぜ?という感情しか出てこなかったが、頂点を極めた選手にしか見えないものがあるのかもしれない。
2022カタールW杯が11月開幕の影響で、例年と比較したら動きは鈍化するかと思っていた。ハーランド選手とレバンドフスキ選手には移籍の噂が出ていたので驚きは少なかったが、カゼミーロ選手の移籍だけは本当に予想外だった。
日本人選手もW杯が11月開幕とはいえ、日本代表で中心となっている選手の多くは新天地への移籍を決めている。ここからは海外組日本人選手の移籍動向を追っていく。
目次
2022-2023夏.日本人選手移籍金トップ5
Jリーグからの海外移籍は依然としてレンタル移籍から買取オプションの流れが多い傾向にあるが、ヨーロッパでプレーしているなら日本人選手でも完全移籍での移籍成立が増えてきた。
完全移籍で移籍が成立する。というのは保有元クラブが事前に設定した移籍金の支払いに応じた別のクラブへの移籍が認められることを意味する。
良い選手を安い移籍金で獲得出来ることが理想的である一方で、高い移籍金を支払って獲得したのに結果がついて来なかったらただの損失になってしまう。
日本人選手を10億程度の移籍金なら支払ってでも欲しいクラブが増えたことは良いことだ。2022-2023シーズン夏の移籍市場で発生した日本人選手の移籍金についてトップ5を出してみた。
選手名 | 所属先 | 移籍先 | 推定移籍金 | |
1位 | 南野拓実 | リバプール | モナコ | 約25億8,000万円 |
2位 | 伊東純也 | ゲンク | スタッド・ランス | 約14億 |
3位 | 堂安律 | PSV | フライブルク | 約11億9,000万円 |
4位 | 久保建英 | レアル・マドリード | レアル・ソシエダ | 約9億円 |
5位 | 板倉滉 | マンチェスター・C | ボルシアMG | 約7億7,000万円 |
10億円以上の移籍金を支払って獲得した選手に対しては試合で明確な結果を残さないと、メディアで厳しい批判に晒されることはヨーロッパのスタンダードだと覚えておかなければならない。
2022年9月末時点では、堂安選手はリーグ戦で2ゴール、カップ戦で1ゴールと結果を残し、板倉選手は怪我をする前まで守備の要としてフル出場を続けていて評価も上々だった。
伊東選手は右サイドを主戦としながらも2トップの1角としてスタメンに定着し、2ゴールと結果を残している。久保選手は開幕戦で決勝ゴールを決める活躍を見せると、これまで主戦であったトップ下と右サイドとは異なる2トップの1角として存在感を発揮している。
問題は南野選手だ。ここまで1ゴール2アシストとまずまずの結果を残してはいるものの、スタメンには定着できず途中出場が多くなってきている。移籍金の金額に見合った活躍をしているとは言い難いので、ここからの挽回に期待したい。
欧州市場:日本人フォワードの価値
欧州市場で日本人フォワードの価値が低いのは周知の事実だが、それは移籍金の金額にも出ている。
2021-2022シーズン、完全移籍が成立した場合で見てみると、ヴィッセル神戸からセルティックへ移籍した古橋亨梧選手の移籍金が約6億1,000万円だった。Jリーグから海外クラブへ移籍した段階での移籍金としては高額な部類に相当する。
ちなみに2022-2023シーズン、夏の移籍で鹿島アントラーズからセルクル・ブルージュへ移籍した上田綺世の移籍金が約1億4,000万円だった。
古橋選手は2021シーズン、上田選手は2022シーズンにJリーグ得点ランキング上位に位置していた中での海外移籍となったが日本代表経験もある中で約4.5倍の差が生じた理由がはっきりしない。古橋選手がヴィッセル神戸で得点を量産している時、そこには必ずイニエスタ選手からのパスがあった。それも加味されたかもしれないが、ヴィッセル神戸が商売上手だった説も否定できない。
上田選手は移籍して間もないため古橋選手との比較は出来ないが、古橋選手がセルティック加入後も得点を量産しているところを見るとスカウトの目に狂いは無かったことになる。
上田選手とは2020東京五輪大会のチームメイトで、古橋選手と同じセルティックへ移籍した前田大然選手は、レンタル移籍から買取の形だったので費用が2段階で発生した。半年間のレンタル料で約2億5,500万円、買取オプション行使で約2億2,000万円、合計約4億7,500万円が所属先の横浜F・マリノスに入った計算になる。こういう例が出るとセルティックに潤沢な資金があったと結論付けても良いかもしれない。
一方でヨーロッパのクラブが日本人選手をJリーグのクラブへ売却する時のベースとなる金額が日本代表クラスだと2億円程度となっている。大迫勇也選手がドイツのブレーメンからヴィッセル神戸へ移籍した時の移籍金が約2億円と言われているが、市場価格としては適正の範囲内だ。
他にも、オナイウ阿道選手が横浜F・マリノスからトゥールーズへ移籍した時の移籍金は約1億円。三笘薫選手が川崎フロンターレからブライトンへ移籍した時の移籍金は約3億9,000万円。日本人フォワードの移籍市場価格は現状3億円前後が目安になっているようだ。
移籍金の価格が欧州から見れば安価なため、Jリーグから海外リーグへやってくることは容易になっているが、そこからステップアップ移籍を果たした日本人フォワードは数えるくらいしかいない。
近年では岡崎慎司選手と武藤嘉紀選手くらいだ。共にドイツ・ブンデスリーガのマインツでプレーして在籍時に、岡崎選手は2シーズン連続リーグ戦で二桁得点を記録、武藤選手はマインツ最終シーズンに公式戦で二桁得点を記録している。
マインツから岡崎選手はレスター、武藤選手はニューカッスルへ共に10億円以上の移籍金で完全移籍を成立させたマインツがビジネス上手なだけかもしれないが、実績として日本人選手2名をイングランド・プレミアリーグへ移籍させている実績がある。5大リーグのクラブで公式戦2桁得点を記録すればステップアップへの道が開かれることは間違いない。
海外で日本人フォワードの価値を高めるためには
1.Jリーグで活躍して欧州へ移籍
2.欧州最初のクラブで結果を出して5大リーグへ
3.欧州5大リーグの1部リーグで公式戦二桁得点を記録
4.移籍金10億円以上でステップアップ移籍
以上の流れが現時点での最善策のようだ。
日本人選手移籍動向一覧
(完全移籍)
選手名 | 所属先 | 移籍先 | 推定移籍金(円) | 契約期間 |
久保建英 | レアル・マドリード | レアル・ソシエダ | 約9億円 | 2027年6月30日まで |
堂安律 | PSV | フライブルク | 約11億9,000万円 | 不明 |
板倉滉 | マンチェスター・C | ボルシアMG | 約7億7,000万円 | 2026年6月30日まで |
南野拓実 | リバプール | モナコ | 25億8,000万円 | 2026年6月30日まで |
伊東純也 | ゲンク | スタッド・ランス | 約11億円 | 2026年6月30日まで |
守田英正 | サンタ・クララ | スポルティング | 約5億1,000万円 | 2026年6月30日まで |
上田綺世 | 鹿島アントラーズ | セルクル・ブルージュ | 約1億4,000万円 | 2026年6月30日まで |
本間至恩 | アルビレックス新潟 | クラブ・ブルージュ | 約1億6,500万円 | 不明 |
(フリー移籍)
選手名 | 所属先 | 移籍先 | 契約期間 | 備考 |
吉田麻也 | サンプドリア | シャルケ | 1年契約 | 延長OP付き |
中山雄太 | ズウォレ | ハダーズフィールド | 2年契約 | |
邦本宣裕 | 全北社会 | カーザ・ピア | 2年契約 | |
中島翔哉 | ポルト | アンタルヤスポル | 2年契約 |
(買取OP行使)
選手名 | 所属先 | 移籍先 | 買取OP(円) |
伊藤洋輝 | ジュビロ磐田 | シュトゥットガルト | 約5,200万円 |
坂元達裕 | セレッソ大阪 | オーステンデ | 非公開 |
藤本寛也 | 東京ヴェルディ | ジル・ヴィセンテ | 非公開 |
前田大然 | 横浜F・マリノス | セルティック | 約2億2,000万円 |
(レンタル移籍)
選手名 | 所属先 | 移籍先 | 契約期間 | 備考 |
橋本拳人 | ヴィッセル神戸 | ウエスカ | 2023年6月30日まで | |
遠藤渓太 | ウニオン・ベルリン | ブラウンシュヴァイク | 2023年6月30日まで | |
斉藤光毅 | ロンメル | スパルタ・ロッテルダ | 2023年6月30日まで | |
前田直輝 | 名古屋グランパス | ユトレヒト | 2023年6月30日まで | 再レンタル |
小川諒也 | FC東京 | ヴィトリア・ギマランエス | 2023年6月30日まで | |
新井瑞希 | 東京ヴェルディ | ジル・ヴィセンテ | 2023年6月30日まで | |
渡井理己 | 徳島ヴォルティス | ボア・ヴィスタ | 2023年6月30日まで | |
田中聡 | 湘南ベルマーレ | コルトレイク | 2023年6月30日まで | 買取OP付き |
川辺駿 | ウルヴァーハンプトン | グラスホッパーズ | 2023年6月30日まで | 再レンタル |
あとがき
今回は「サッカーと移籍金」をテーマにしました。日本人選手でもヨーロッパで活躍すれば、次のクラブへは10億円以上の移籍金で取引されるようになってきたのは感慨深いです。5大リーグへのステップアップで10億の移籍金は世界的に見れば安価な金額かもしれませんが、現時点での日本人選手の価値はここがボーダーラインです。
20億円以上となるとヨーロッパでも比較的認知度の高い日本人選手として注目を集めることになってやっと、ワールドクラスの選手達と切磋琢磨しながら競い合うことが許されるのかもしれません。
歴代日本人選手移籍金ランキング:トップ10(2022年9月現在)
選手名 | 所属先 | 移籍先 | 推定移籍金 | |
1位 | 中島翔哉 | ポルティモネンセ | アル・ドゥハイル | 約43億7,000万円 |
2位 | 中田英寿 | ローマ | パルマ | 約32億5,000万円 |
3位 | 冨安健洋 | ボローニャ | アーセナル | 約30億円 |
4位 | 南野拓実 | リバプール | モナコ | 約25億8,000万円 |
5位 | 香川真司 | ドルトムント | マンチェスター・U | 約20億円 |
6位 | 武藤嘉紀 | マインツ | ニューカッスル | 約14億6,000万円 |
7位 | 伊東純也 | ゲンク | スタッド・ランス | 約14億円 |
8位 | 岡崎慎司 | マインツ | レスター | 約13億7,000万円 |
9位 | 堂安律 | PSV | フライブルク | 約11億9,000万円 |
10位 | 久保建英 | レアル・マドリード | レアル・ソシエダ | 約9億円 |
【補足情報】
※移籍金は契約当時の推定価格
※1選手に対し最高額となった移籍金を元にランキングを作成
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