日本人選手がヨーロッパ各国リーグでプレーするのが当たり前になりつつある現在の市場において、1つ見過ごせない問題がある。
それは欧州4大リーグ(イングランド、スペイン、イタリア、ドイツ)でプレーしている日本人選手が少ないこと。
今回はドイツ・ブンデスリーガ、イングランド・プレミアリーグについて検証する。
目次
ドイツ・ブンデスリーガ
ブンデスリーガはヨーロッパのリーグの中でも日本人選手に合うと言われてきたリーグだ。
振り返ってみても、奥寺康彦氏(ケルン⇒ヘルタ⇒ブレーメン)、高原直泰選手(ハンブルガーSV⇒フランクフルト)、長谷部誠選手(ヴォルフスブルク⇒ニュルンベルク⇒フランクフルト)香川真司選手(ドルトムント)、内田篤人選手(シャルケ⇒ウニオン・ベルリン)、岡崎慎司選手(シュトゥットガルト⇒マインツ)などがブンデスリーガの歴史に名を刻んできた。
2010-2011シーズン以降、多くの日本人選手がブンデスリーガでプレーしてきたが、2019-2020シーズンはこれまでとは少し様子が異なっているようだ。
今シーズン長谷部選手、鎌田大地選手、大迫勇也選手はブンデスリーガでプレーする。
ドイツ11年目の長谷部選手はリベロのポジションでさらに選手として飛躍している。
鎌田選手はベルギー武者修行を経てフランクフルトに復帰したばかりで、シーズンでどれだけ活躍するのは未知数な部分が多いが、ベルギーリーグで見せたゴールは期待されているはずだ。
日本代表不動のワントップである大迫選手にはストライカーとしてさらなる覚醒を期待したい。
この3選手は日本人選手の中の選ばれし精鋭達といっても過言ではないが、どこか物足りない。
ここからは推測であるが「日本人選手を獲得してもクラブを上位に押し上げる活躍をした選手が少ない」という残酷な現実があると考えている。
2018-2019シーズンの順位だが、長谷部選手の所属するフランクフルトは7位、大迫選手の所属するブレーメンは8位とまずまずの位置でフィニッシュ。
宇佐美貴史選手の所属していたデュッセルドルフは10位と1部リーグ昇格最初のシーズンとしては降格を逃れただけでも良かったのではないだろうか。
ただ、原口元気選手、浅野拓磨選手のハノーファーは17位、久保裕也選手の所属していたニュルンベルクは18位となり、日本人選手所属の2チームが2部降格となっている。
2部リーグ降格となり、浅野選手はセルビアへ移籍、久保選手はベルギーに復帰した。
原口選手はハノーファーに残っているが移籍の噂は出ているので、マーケットが閉まるまでは動向に注目したい。
ハノーファー、ニュルンベルクは1残留のために日本人選手を補強した部分もあったに違いない。
それにも関わらず、原口選手、浅野選手、久保選手はゴールという明確な結果も残すことができなかった。
選手個人の成績もそうだが、チームを上位に押し上げるプレーを年間通して見せて欲しいのもある。
2018-2019シーズン、フランクフルトはヨーロッパリーグで準決勝進出と躍進はしたが、近年ドイツ勢はバイエルン・ミュンヘンを除くとチャンピオンズリーグでは苦杯をなめている。
日本人選手所属のドイツクラブでは、シャルケの内田選手が2010-2011シーズンにベスト4、ドルトムントの香川選手が2016-2017シーズンにベスト8に残った以来、低迷している。
ドイツクラブにとって日本人選手の獲得に消極的になった理由は明確だ…。
今シーズン、前評判ではバイエルンとドルトムントの2強となっているが、フランクフルトとブレーメンがどこまで割って入れるのかも併せて注目したい。
イングランド・プレミアリーグ
プレミアリーグは、英国労働許可証の関係もあり、日本人選手がプレーする機会は少なかったリーグだ。
川口能活氏(ポーツマス)、西澤明訓氏(ボルトン)、戸田和幸氏(トッテナム)、中田英寿氏(ボルトン)、稲本潤一選手(アーセナル⇒フルハム⇒ウエスト・ブロミッチ)、宮市亮(アーセナル⇒ボルトン⇒ウィガン)と在籍記録はあるが、結果を残したかと問われれば難しい。
2012-2013シーズンに、香川真司選手がマンチェスター・ユナイテッド、吉田麻也選手がサウサンプトンに加入してから、日本人選手も目に見える結果を出しているように思える。
2012-2013シーズンにマンチェスター・ユナイテッドはリーグ優勝を果たし、香川選手はアジア出身選手として初のハットトリックを達成している。
2015-2016シーズンには、岡崎慎司選手がレスター・シティに加入し、クラブ創設132年で初のプレミアリーグ初優勝に貢献したことだろう。
ジェイミー・ヴァーディー選手と不動の2トップを形成し、優勝メンバーとして歴史に名を遺した。
それでも、プレミアリーグでは目に見える結果を残しても長年プレーすることは難しい。香川選手、岡崎選手も出場機会を失い移籍していった。
その中でも在籍8年目となるサウサンプトンの吉田選手は、稀な存在だ。
出場機会に恵まれないシーズン、怪我による離脱、本職ではないサイドバックでプレーなど、紆余曲折があった中でも、チームの1部残留には貢献してきている。
今シーズンも1部残留が至上命題のチームにおいて、センターバックとして守備を統率できるのだろうか。
プレミアリーグ2シーズン目を迎えるニューカッスルの武藤嘉紀選手は正念場になるだろう。
昨シーズン、マンチェスター・ユナイテッド戦でゴールを決めたとはいえ、この1ゴールのみでは結果を残したとは言い難い。
日本人選手で目に見える結果を残せなかった選手で、3シーズン目を無事に迎えた例はない。まずはレギュラー定着が目標になるかもしれないが、冬の移籍市場でレンタルに出される可能性は否定できない。
その他にも、マンチェスター・シティと契約している、板倉滉選手と食野亮太郎選手がいるが、レンタル先でプレーすることになるので今回は割愛させていただく。
余談
中堅クラブからビッククラブへの移籍はヨーロッパのトレンドである。
なぜかサウサンプトンからリバプールに移籍した選手が多いことに気付く。
吉田選手がサウサンプトンに在籍した2012-2013シーズン以降、チームメイトとしてプレーしたセネガル代表のサディオ・マネ(2014-2016)、クロアチア代表のデアン・ロブレン(2013-2014)、オランダ代表のファン・ダイク(2015-2017)の3人はリバプールに移籍している。
※()内は、サウサンプトン在籍シーズン
少し振り返ると、サウサンプトンは、2011-2012シーズンに2部リーグを2位にとなり1部昇格を決めた!このシーズン途中から現横浜F・マリノスの李忠成選手が在籍することになる。日本人サポーターにとって馴染みのあるクラブとなり、1部挑戦となる2012-2013シーズンに吉田選手が加入し、日本人選手が2人在籍していた時期もあった。
プレミアリーグに昇格した2012-2013年シーズンは14位となんか残留すると、2013-2014シーズンは8位、2014-2015シーズンは7位、2015-2016シーズンは6位、2016-2017シーズンは8位と、リーグ10位以内で終える安定した成績を残している。
だが安定したシーズンを過ごしたオフには、主力してプレーした選手がシーズン終了後に引き抜かれるパターンが繰り返されている。
主力だったマネ選手、ロブレン選手、ファン・ダイク選手も移籍していったが、それぞれ時期は違えどリバプールに移籍することになっている。
先日行われたプレミアリーグ第2節で、サウサンプトンはリバプールに1対2で敗れているが、この2チームの試合を観ていると元サウサンプトンの選手がリバプールに多いと感じてしまう。
リバプールが欲しがる選手とポジション争いをしてきたのが吉田選手。
ロブレン選手、ファン・ダイク選手といった欧州屈指のセンターバックから、ポジションを奪うのは容易なことではなかったはずだ。
レギュラーが移籍したからといって吉田選手に自動的にポジションが与えられるわけではない。厳しいポジション争いは毎シーズンのようにあり、ピッチに立つ権利をかけて戦っているのも日常だ。
ここにプレミアリーグでプレーする難しさの1つがあると感じている。