パナソニックスタジアム吹田でベネズエラ代表と国際親善試合が行われた。
W杯アジア2次予選アウェイのキルギス戦からメンバーの入れ替わりがあり、新戦力のパフォーマンスに注目が注がれたが…。
マッチレビュー
日本代表 1-4 ベネズエラ代表
日本代表のフォーメーション
()内は交代出場した選手
フォーメーション:4-4-2
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浅野拓磨 鈴木武蔵
(永井謙佑) (古橋亨梧)
中島翔哉 原口元気
(井手口陽介)
柴崎岳 橋本拳人
(山口蛍)
佐々木翔 畠中槙之輔 植田直通 室屋成
(三浦弦太)
川島永嗣
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【得点者】
後半24分;山口蛍
【日本代表スタッツ】
ボール支配率 :46%
シュート数 :14本
枠内シュート : 6本
パス成功率 :84%(480本)
オフサイド : 1回
フリーキック :17本
コーナーキック: 4本
<スタジアム/現地情報>
スタジアム:パナソニックスタジアム吹田
観客数 :33,399人
天候 :晴れ
気温 :12.6℃
湿度 :42%
編集長の考察
ベネズエラ代表との親善試合は2018年11月16日以来。ちょうど1年前に対戦した時は1対1の同点で終えていた。
この時の日本のフォーメーションは4-2-3-1。
ワントップに大迫選手。2列目は左から中島選手、南野選手、堂安選手が並ぶ。ダブルボランチは柴崎選手と遠藤選手。ディフェンスラインは左から佐々木選手、吉田選手、冨安選手、酒井選手。長友選手を欠いていたとはいえほぼ不動のメンバーで構成させていた。
前半39分に酒井選手のゴールで先制するも、後半36分に同点に追いつかれてしまい引き分けに終わった。
なお、ベネズエラ代表はエースのサロモン・ロンドン選手も先発出場しており、1点ビハインドの後半20分に交代となっている。
森保体制が発足した約1年前はイケイケどんどんのチームで連戦連勝だった日本代表だが、連勝を止めたのはベネズエラだった。
W杯アジア2次予選アウェイでのキルギス戦を終え、所属クラブに戻ることになった9選手(長友選手、吉田選手、酒井選手、遠藤選手、伊東選手、南野選手、鎌田選手、安西選手、シュミットダニエル選手)が抜けて、ベストメンバーを組めない日本代表にとって簡単な試合にはならないことは試合前から明らかだった。
良い様にやられた前半
そもそも日本のパスが合わないところでリズムが生まれず、自ら流れを手放した結果が、前半だけで4点も失うことになった。
23番のサロモン・ロンドン選手にはハットトリック。
18番のジェフェルソン・ソテルド選手には、先制点のアシストにトドメの4点目。
先制点は日本の右サイドからソテルド選手のクロスからロンドン選手がヘディングで合わせて先制点を奪われた。
このシーン、まずはソテルド選手に対応した室屋選手が簡単にセンタリングを上げさせている時点で問題だが、ロンドン選手との空中戦で競り合った佐々木選手のプレーもフィジカルコンタクトが軽く、どちらもフリーに近い形で相手にプレーさせてしまった。
2点目は日本の左サイドからマチス選手のセンタリングにロンドン選手が合わせて追加点を奪われる。
これも簡単にセンタリングを上げさせてしまったことから、中でロンドン選手に合わせられる先制点と似たような形で得点を許してしまう。
人は揃っているけど誰も寄せていない。ボールを持っている相手に対してプレッシャーをかけにいけないなら、どうぞ自由にプレーしてくださいと言っているようなもの。ゴールキーパーの川島選手にとってはノーチャンスなシュートばかりだった。
前半30分に2点目を失うと立て続けに失点し4失点。
8分間に3点を奪われたのは問題だが、同時に2006年ドイツW杯初戦のオーストラリア戦の後半35分以降に立て続けに失点したあのシーンが頭の中でフラッシュバックしていた。
球際に激しくいけない選手、体を張って競り合えない選手は代表に必要ない。練習でのミニゲームを見ているみたいだった。
ゴールポストに救われて5失点目は避けられたが、あの場面が無かったら前半だけで完全に試合は終わっていた。
後半立て直したように見えたのは間違い
後半からメンバーを2人交代して、フォーメーションを4-2-3-1に戻した。
中島選手をトップ下に置くことで攻撃の自由を与えた。左に原口選手、右に古橋選手と2列目が機能したことにより、日本の攻撃は時間が経過する中で勢いを増した。
…のように見えているのは実は大きな間違いだ。
確かに前半よりかは日本のパフォーマンスは向上したが、それは明らかにベネズエラがペースを落としていたから。
4点リードで前半を折り返したので無理に攻める必要もない。
後半のプランはおそらくだが、攻撃的に来る日本に対してしっかり守って無失点に抑える。チャンスがあればカウンター1発で仕留める…というプランだったように思う。
その根拠は前半だけでハットトリックを決めたロンドン選手を交代させずに前線に残したこと。日本にとって危険なプレーをしていたソテルド選手を後半32分まで起用したことだ。
本来なら4点リードした段階、ましてや親善試合なので前半だけで交代となっても問題ない展開だった。それでもベネズエラは来年から開催される2022年カタールW杯南米予選のため、テストマッチの場を有効活用した。
その中でも日本にも収穫はあった。中島選手のトップ下起用が機能したこと。
左サイドを主戦場にしているが、サイド起用になるとどうしても守備の負担が増える。
一方でトップ下だと前線からプレスをかけて守備をする必要があるが、ディフェンスラインまで戻る場面は限られるので、守備負担はサイドに比べると微減する。
ベネズエラがペースを落としていたとはいえ、中島選手が後半攻撃面で躍動したのは見間違えではない。ベネズエラは攻撃のペースは落としても守備は最後まで集中力を切らしていなかった。
日本が得点したシーンは山口選手のミドルシュートが相手ディフェンダーに当たってコースが変わってゴールに吸い込まれたことによって生まれた。ディフェンスはシュートコースに入っていたわけだし、ゴールキーパーもシュートコースにしっかり反応していた。
結果として、あの流れの中で1点しか取れなかった日本の方に問題があったとしか思えない。
後半は日本の攻撃より、中島選手とベネズエラ守備陣のガチンコ勝負になっていた。
ベネズエラがリードしているのにも関わらず、中島選手がボールを持っている時のプレッシャーの激しさは「1対1の同点で次の得点が勝負を決する」という試合で見せるものだった。
振り返れば、2018年10月16日にホームで行われたウルグアイ代表との親善試合。
この試合で中島選手がウルグアイディフェンス陣を翻弄したことから『STOP THE 中島』が、日本と対戦する時の南米チームのモチベーションになっているようにも感じるのは気のせいではないかもしれない。
不安なのはE-1選手権
森保監督に厳しい目が向けられているが、これで解任される方が日本代表の終焉となるだろう。
実際にW杯アジア2次予選は4連勝中と最低限の結果を残している。
入ったグループに恵まれたといえばそうかもしれないが、韓国、イランの苦戦をみるとアジア2次予選といえど楽な試合はない。その中で勝ち点3を順調に積み上げている監督をこの段階で解任する必要はない。
もし、ザッケローニ氏が監督だったとしても
試合開始から安易なパスミスで自滅しているチームではインテンシティーもあったものじゃない。
もし、ハリルホジッチ氏が監督だったとしても
デュエルを放棄したような守備をしているチームでは大量失点も改善されない。
責任を監督に押し付けるだけでは成長しないことを我々サポーターは学ばなければならない。ピッチでの結果は選手にも問題がある。
ベネズエラ戦での惨敗を取り戻すには、来月に韓国で開催されるE-1選手権で優勝するしかない。
国際Aマッチデーではないため海外組を招集することはできないが、国内組がアピールする唯一の機会だ。
E-1での活躍からA代表常連まで駆け上がった選手は少なくない。ベネズエラ戦で活躍できなかった国内組にはE-1でのプレーで評価を覆して欲しい。