カタールW杯前最後の代表活動ではアメリカ、エクアドルとの2試合が組まれている。今回の国際親善試合は海外遠征となりドイツ・デュッセルドルフにて試合が開催されることになった。W杯グループリーグ初戦で対戦するドイツで日本代表がどういう試合を見せるのか注目している。
マッチレポート
日本は4-2-3-1でスタート。トップ下に鎌田選手を配置するパターンで来たが、基本フォーメーションは4-2-3-1がベースで考えているのだろうか。
あくまで4-3-3は守備的に行くためのプランBの意味合いがあると思ったのは、センターフォワード不在と中盤3枚の構成が1パターンしかないところに落ち着いたのかと考えたが、アメリカが4-3-3で来るのがスカウティングでわかっていたから日本がフォーメーションを変えて対応した柔軟性を見せたと考えるのもありだ。
相手の出方を予測しての選手起用やフォーメーションを決めることが出来れば理想だが、それがハマった結果が前半の良い試合を生み出していた。
後半から選手を入れ替えたことで、立ち上がりは前半と同じようにはいかなかった。前線からのプレスが前半ほど機能しておらず、アメリカの攻守の切り替えの速さに対応できない場面もあったが、ダブルボランチを中心にチームとしての守備は90分を通して安定していた。
欲を言えば、追加点をもっと早い時間帯で奪えたらゲームプランとしては理想だったかもしれない。積極的にゴールを狙うのか、1点をリードしているから無理せずに攻守のバランスをとるのか、はっきりしないプレーも見られたが、アメリカ戦での結果と内容には満足している。
【フォーメーション:4-2-3-1】
()内は交代時間と交代出場した選手
前田大然
(45,町野修斗)
久保建英 鎌田大地 伊東純也
(68,三笘薫) (86,原口元気) (68,堂安律)
守田英正 遠藤航
中山雄太 酒井宏樹
(45,伊藤洋輝)
冨安健洋 吉田麻也
権田修一
(45,シュミット・ダニエル)
テストマッチの要素が多かった
常連組の中でも怪我やコンディション不良でチームを離れていた、酒井選手と冨安選手がどのくらいプレーできるのか確認作業をしている印象も受けた。経験豊富な酒井選手に、今や日本歴代最高のディフェンダーとしての呼び声も高い冨安選手なら怪我なくプレーしてくれれば何も問題はないと思っている。
2列目の構成もこれまでとは少し変えてきた。久保選手が左サイドでもトップ下や右サイドと同様のプレーを見せたことで起用の幅は広がった。つまり2列目のポジション争いが今後さらに加熱することを意味する。
1トップに今シーズン所属クラブで得点を量産している古橋選手を差し置いて前田選手を起用したのは、前線からのプレスでハメて2列目との連動性でショートカウンターを仕掛ける狙いがあったなら攻撃のオプションとしては面白いと思った。
これまで1トップにポストプレーを求めすぎてしまい縦パスが収まらないと、連動して攻撃に移れない場面が多かっただけに選手の組み合わせによってはもう少し引き出しは増やせそうな感じはしている。
2点リードで迎えた試合終盤に原口選手を投入して、フォーメーションを5-4-1にしたのは本番を想定したものだろう。少しの時間帯だけしか見れなかったが、守備の時は5-4-1で攻撃の時は3-4-3に近いイメージを持ってプレーしていたように見えた。リードしている段階でどう試合を終わらせるのか、交代枠の5をどのように使うかは首脳陣のベンチワークにかかっている。
E-1で活躍した国内組の立ち位置
7月に日本で開催された「EAFF E-1サッカー選手権2022」(E-1)で活躍した町野修斗選手と相馬勇紀選手が今回の海外遠征に招集された。
この試合は町野選手が後半開始から出場するも見せ場を作ることは出来なかった。連携面について仕方ない部分はあったが、前線でのこぼれ球に対して準備出来ていなかったプレーだけは残念だった。
相馬選手に出番は回ってこなかったが、次のエクアドル戦が最後のアピールの場となる。常連組を脅かすぐらいの圧倒的なパフォーマンスを見せないと、本大会の選手登録枠が26人に増えたとはいえ、厳しい立場にいることは変わりない。
収穫と課題
ダブルボランチなら遠藤選手と守田選手のコンビで動かす必要はない。問題はこの2人を同時起用出来ない状況だけは避けることだ。
バックアップの1番手は田中碧選手になると思うが、現在の日本代表の中盤はこの3人に依存している状態なのは間違いない。4-3-3の中盤の3枚の構成にしても、1人でも欠けた時の強度は他の選手でもカバー出来ていない。
次のエクアドル戦で日本代表の首脳陣がボランチの構成で他にどういう組み合わせを持っているのか見極める必要がある。仮に2試合連続で遠藤選手と守田選手を先発起用となった場合は危険信号だ。
冨安選手が代表でも右サイドバックとして計算出来る目処は立った。所属するアーセナルでの主戦場ではあるが、代表ではセンターバックでプレーすることが多いのは
右サイドバックの1番手は酒井宏樹選手であることが大きい。しかし酒井選手が怪我から復帰したばかりでコンディションもまだ万全ではなく、バックアップとしてスピードと高さのある冨安選手を回せるなら日本の右サイドはより鉄壁となるだろう。
マッチレビュー
日本代表 2-0 アメリカ代表
【日本代表:得点者】
前半25分;鎌田大地
後半43分;三笘薫
【スタッツ】
日本代表 | アメリカ代表 | |
---|---|---|
ボール支配率 | 42% | 58% |
シュート数 | 12本 | 5本 |
枠内シュート | 8本 | 0本 |
パス成功率 | 449(80%) | 591(83%) |
オフサイド | 0回 | 2回 |
フリーキック | 5本 | 16本 |
コーナーキック | 8本 | 2本 |
【スタジアム/現地情報】
スタジアム:デュッセルドルフ アレーナ
観客数 :5,149人
天候 :晴れ
気温 :21.5℃
湿度 :40%
招集メンバー
ポジション | 背番号 | 選手名 |
---|---|---|
GK | 1 | 川島永嗣 |
12 | 権田修一 | |
23 | シュミット・ダニエル | |
30 | 谷晃生 | |
DF | 5 | 長友佑都 |
22 | 吉田麻也 | |
19 | 酒井宏樹 | |
3 | 谷口彰悟 | |
2 | 山根視来 | |
20 | 中山雄太 | |
16 | 冨安健洋 | |
28 | 伊藤洋輝 | |
4 | 瀬古歩夢 | |
MF | 8 | 原口元気 |
7 | 柴崎岳 | |
6 | 遠藤航 | |
14 | 伊東純也 | |
10 | 南野拓実 | |
13 | 守田英正 | |
15 | 鎌田大地 | |
27 | 相馬勇紀 | |
18 | 三笘薫 | |
24 | 旗手怜央 | |
21 | 堂安律 | |
17 | 田中碧 | |
11 | 久保建英 | |
FW | 9 | 古橋亨梧 |
25 | 前田大然 | |
26 | 上田綺世 | |
29 | 町田修斗 |
アメリカ戦:ベンチ外
GK.川島永嗣
DF.瀬古歩夢
MF.旗手怜央
FW.上田綺世
アドバイザー
フランクフルトに所属する長谷部誠選手が現地時間9月22日から24日までの3日間、ロールモデルプレイヤーとして日本代表チームに電撃復帰した。
ただし代表引退は宣言しているので選手としてではなく臨時コーチとしての参加になる。
代表ウィークのためリーグ戦は中断しているので本来なら束の間オフのはずだが、日本代表の海外遠征先がドイツになったこと、フランクフルトからデュッセルドルフまで電車で約2時間の距離だったことも参加の後押しになったのかもしれない。
あとがき
日本代表チームのストロングポイントは2列目の連動性よりもダブルボランチだということが、この試合ではっきりした。
W杯初戦のドイツ戦は間違いなくダブルボランチを潰しにくることが予想される。
日本の心臓部分を機能されるための対策の対策は準備しているはずだが、勝負の分かれ目は中盤での主導権争いがカギになりそうだ。