カタールW杯、日本代表の初戦の相手はドイツ代表です。
W杯常連の強豪国はグループリーグ初戦にピークを持ってこないので波乱を起こすなら初戦が1番可能性として高いですが、こんな試合展開になるとは予想できませんでした。
マッチレポート
前半からドイツがボールを保持し、15分頃まではドイツの保持率が80%と日本がボールを持っているシーンをほとんど見なかった。
日本がカウンターからゴールネットを揺らすシーンはあったが完璧なオフサイド。試合展開から考えれば千載一遇のチャンスの場面でオフサイドラインを見ていなかった前田大然選手には反省が必要なプレーだった。
前半33分にPKを成功されドイツに先制点を奪われてしまう。結果的にPKになったが、ここに至るまでにドイツの特徴が出ていた。ドイツが片方のサイドに日本の意識を寄せておいて、大きく空いた逆サイドへボールを振って仕留めにいく形から生まれたものだった。
前半は完全にドイツが主導権を握り、1点ビハインドで折り返すことになった日本代表だが、前半の試合展開からあることがふと頭をよぎった。
前半にPKで先制点を許す。前半のうちに追加点を奪われたかと思われたが、VARでオフサイド判定になりゴールは取り消しに。1点ビハインドので前半を折り返す。
これはアルゼンチン対サウジアラビアの一戦でサウジアラビアが逆転勝ちして大金星が生まれた展開に似ているとは思ったが、驚きの後半が待っていた。
後半は4バックから3バックにシステムを変更すると守備が安定し、ゴールキーパー権田修一選手がドイツのシュートを立て続けに4本連続でストップしたところから日本に流れが傾く。このプレーもあってこの試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に権田選手が選ばれている。
後半30分、途中出場の南野拓実選手のセンタリングをドイツのゴールキーパー、ノイアー選手が弾くも弾いた先にいた堂安選手が左足で同点ゴールを決める。
さらに後半38分、板倉滉選手のロングパスを浅野拓磨選手がトラップすると、ドリブルでペナルティエリア内に侵入し角度のないところから右足で逆転ゴールを決める。
展開予想でも勝負所は後半30分以降になると記載していましたが、予想の段階では消耗した日本のディフェンス陣が崩れることを想定していた。しかし実際に勝負を決めたのは途中出場した日本の攻撃陣だった。
このマッチレポートを書いている時も、日本がワールドカップでドイツに勝利したことが信じられない気持ちです。
【日本代表フォーメーション:4-2-3-1】
()内は交代時間と交代出場した選手
前田大然
(57,浅野拓磨)
久保建英 鎌田大地 伊東純也
(45,冨安健洋)
田中碧 遠藤航
(71,堂安律)
長友佑都 酒井宏樹
(57,三笘薫) (75,南野拓実)
吉田麻也 板倉滉
権田修一
システム変更が流れを変える
ドイツの左サイドバックのラウム選手が常に高い位置を取っていたため、日本のマークがズレてしまい危ない場面を何度も作られていた。日本は後半開始から3バックに変更し、守備の時には5バックにして守ることによって徐々にペースを取り戻していった。
システムを3バックにするのは、これまでの親善試合を見ても終盤にしかやってこなかった作戦だった。守備を立て直すというより、守備を安定させながら攻撃にも出ていく意図があったのかもしれない。それは選手交代に現れていた。
ギャンブルに近い交代策がハマる
1点ビハインドの段階で攻撃的な選手が投入するのは当然だが、2列目が主戦の伊東純也選手、三笘薫選手をウィングバックとして起用したことが攻撃的に行くメッセージをより強くしたと思う。
ドイツに押し込まれる展開になった時は最終ラインまで戻って守備に参加しなければならないため、攻撃が前線の3選手に頼らざるを得なかったが、両ウィングバックがオーバーラップするたびに攻撃の人数が増えるので日本の攻撃に厚みが出たことが結果的に良かったと思う。
2022年1月11日に掲載したコラム「サッカー日本代表システム総論2022:フォーメーション(3-5-2)」にて、2022年カタールW杯でベスト8を越えるためのウルトラC作戦として、3バックについて私の中で構想していたものがありました。
2022年1月時点のため表記している選手は大きく異なりますが、両ウィンバックに伊東選手と三笘選手を1番手で選出していました。両選手は自分の前にスペースがある方がスピードとドリブルを活かしやすいので、より個の力が発揮できるはずだ。と私の頭の中で勝手に考えていたことがドイツ戦で実現したことにも驚いています。
【フォーメーション:3-4-2-1】
※試合終了時点での並び
浅野拓磨
南野拓実 堂安律
鎌田大地 遠藤航
三笘薫 伊東純也
冨安健洋 吉田麻也 板倉滉
権田修一
グループリーグ2戦目に向けて
少し気になるのは試合中に負傷者が出たこと。酒井宏樹選手は交代カードが残っている段階だったので交代できたが、後半開始から出場した冨安健洋選手が負傷した時間帯は交代カードを使い切っていたこともあり最後までプレーせざるを得ない状況を招いてしまった。
中3日で行われる2戦目のコスタリカ戦での出場は厳しいと考えた方が良いだろう。大会前から言葉にしていた「総力戦」が既に現実となってしまった。
マッチレビュー
日本代表 2-1 ドイツ代表
【日本代表:得点者】
後半30分;堂安律
後半38分;浅野拓磨
【スタッツ】
日本代表 | ドイツ代表 | |
---|---|---|
ボール支配率 | 31% | 69% |
シュート数 | 11本 | 26本 |
枠内シュート | 3本 | 8本 |
パス成功率 | 266(72.6%) | 773(87.6%) |
オフサイド | 4回 | 4回 |
フリーキック | 10本 | 17本 |
コーナーキック | 6本 | 6本 |
日本代表メンバー26名
ポジション | 背番号 | 選手名 |
---|---|---|
GK | 1 | 川島永嗣 |
12 | 権田修一 | |
23 | シュミット・ダニエル | |
DF | 5 | 長友佑都 |
22 | 吉田麻也 | |
19 | 酒井宏樹 | |
3 | 谷口彰悟 | |
2 | 山根視来 | |
4 | 板倉滉 | |
16 | 冨安健洋 | |
26 | 伊藤洋輝 | |
MF | 7 | 柴崎岳 |
6 | 遠藤航 | |
14 | 伊東純也 | |
10 | 南野拓実 | |
13 | 守田英正 | |
15 | 鎌田大地 | |
24 | 相馬勇紀 | |
9 | 三笘薫 | |
8 | 堂安律 | |
17 | 田中碧 | |
11 | 久保建英 | |
FW | 18 | 浅野拓磨 |
25 | 前田大然 | |
21 | 上田綺世 | |
20 | 町田修斗 |
ドイツ代表メンバー26名
ポジション | 選手名 | 所属クラブ |
---|---|---|
GK | マヌエル・ノイアー | バイエルン |
ケヴィン・トラップ | フランクフルト | |
テア・シュテーゲン | バルセロナ | |
DF | クリスティアン・ギュンター | フライブルク |
アントニオ・リュディガー | レアル・マドリード | |
マティアス・ギンター | フライブルク | |
ニコラス・ジューレ | ドルトムント | |
ルーカス・クロスターマン | ライプツィヒ | |
ティロ・ケーラー | ウェストハム | |
ダビド・ラウム | ライプツィヒ | |
ニコ・シュロッターベック | ドルトムント | |
アルメル・ベラコチャプ | サウサンプトン | |
MF | イルカイ・ギュンドアン | マンチェスターC |
マリオ・ゲッツェ | フランクフルト | |
ヨナス・ホフマン | ボルシアMG | |
レオン・ゴレツカ | バイエルン | |
ヨシュア・キミッヒ | バイエルン | |
セルジュ・ニャブリ | バイエルン | |
ユリアン・ブラント | ドルトムント | |
カイ・ハフェルツ | チェルシー | |
ジャマル・ムシアラ | バイエルン | |
FW | トーマス・ミュラー | バイエルン |
ニコラス・フュルクルク | ブレーメン | |
レロイ・サネ | バイエルン | |
カリム・アデイェミ | ドルトムント | |
ユスファ・ムココ | ドルトムント |
【ドイツ代表フォーメーション:4-2-3-1】
()内は交代時間と交代出場した選手
ハフェルツ
(79,フュルクルク)
ムシアラ ミュラー ニャブリ
(79,ゲッツェ) (67,ホフマン) (90,ムココ)
ギュンドアン キミッヒ
(67,ゴレツカ)
ラウム ジューレ
シュロッターベック リュディガー
ノイアー
【スタジアム/現地情報】
スタジアム | ハリファインターナショナルスタジアム |
観客数 | 42,608人 |
天候 | 晴れ |
気温 | 26℃ |
温度 | 41% |
あとがき
日本代表のグループリーグ展望を前回のコラムで掲載していましたが見事に外れてしまいまして逆神が誕生しました。
初戦に勝利したことで日本のグループリーグ突破の可能性が高くなったので、次のコスタリカ戦でドイツ戦での勝利が無かったことにならないように祈るだけです。
最大の懸念は、この試合で日本が全てを出し尽くしてしまったのではないかということ。ドイツに勝利した瞬間がW杯出場権を獲得した時のような喜び方だったのも気になります。
まだ日本のグループリーグ突破は決まっていません。仮に決勝トーナメント進出を逃して、メディアから手のひらを返される場面は見たくないので、評価は全て終わった時に行いましょう。